身近。 ページ20
「ねぇ、太刀川さん」
手伝うことはせず、ただソファにうつ伏せになってその人の背中に声をかける。
「んー、なんだ」
ガシガシ頭をかいてそう返す太刀川さんは、一文書くのにすごい時間をかけている。
「なんでボーダーに入ろうと思ったの?」
キーボードを打つ手が一瞬止まって、それからまたガシガシと頭をかく太刀川さん。
「さぁな。いつの間にかボーダーにいた」
「不思議だ」と一人勝手に笑いながらレポートを再開する。
「誰か守りたい人いるとか?」
「特にいねぇな」
カタカタと、キーボードを打つ音だけが部屋に響く。打っては間違え消す、その繰り返し。
「やっぱ戦うのが好きだから?」
「まぁ、どっちかって言うとそうだな」
「あー、やめだやめだ」頭を抱えそう叫ぶ太刀川さんは、私のいるソファに頭を預ける。顎を上げてこちらを見る太刀川さんと目が合った。
「なんだよ、いきなり」
伸びてきたその手は私の頬を撫で、そのまま首筋へと移動する。
「なんでもない」
「そういうお前もなんでボーダーに入ったんだよ」
「気づけばボーダーにいた、以上」
「それさっき俺が言ったよな?」小さく笑う太刀川さんはあくびをして、眠そうに目を擦る。
「ねぇ、もし私が近界民に殺されたらどうする?」
唐突の質問に瞬きを繰り返した太刀川さんは首を傾げ口を開く。
「お前が殺されるとかねーだろ」
「もしもだよ、もしも」
「さぁー。仇討ちとか?」
ムクリと上体を起こした太刀川さんは体ごと私に向ける。
「想像もつかねぇな、それ」
前髪を搔き上げ、額にキスを落とした太刀川さんはそう言った。
「太刀川さんって、身近で誰かが死ぬ、ってこと経験したことある?」
「あー、親戚のじぃさんが寿命で死んだ」
「……あのねー」
話しが噛み合わないことにため息をこぼす。
でも、深く話しすぎて空気が重くなるのはあまり良くない。
「ほら、さっさと終わらせてよ」
近い額にピコッとデコピンを食らわされた太刀川さんは「餅ねぇとやる気出ねぇや」そうポツリと呟いた。
◇
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柳スウ - 太刀川さんの小さな気遣いカッコいい。 (2016年7月13日 16時) (レス) id: 4dc969e182 (このIDを非表示/違反報告)
日菜(プロフ) - 前まで出水くんが一番好きだったのにこれを読んでから太刀川さんが好きになった……凄いいい話…・゜・(。´ノω・`)。ウウゥゥ (2016年5月3日 20時) (レス) id: 65293e9234 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:§KAYA§ | 作成日時:2016年5月3日 19時