自印。 ページ1
目を覚ましたら太刀川さんが横にいて、昨日のことはすべて本当だったんだ、って確信する。
「……恋人」
唇を指でなぞってそう呟く。
たぶん今、ほんとの恋をしてるんだと思う。
付き合ったことは何回もあるのに、知らないことがたくさんある。
間近で太刀川さんを見ることは何度もあったのに心臓がうるさく鳴ってる。
無造作に被ってる布団をきちんとかけてやり、静かに仮眠室から出ていった。
◇
「おはよ、A」
「どうも」
昨日今日に続き懲りずに私の前に現れる迅さん。そんなに私をからかって楽しいんだろうか。
辺りを見渡した迅さんは私に視線を戻して口を開いた。
「太刀川さんは？」
「……今寝てます」
「ふーん、『今寝てる』…か」
にやける迅さんに数回瞬きし、それから強く睨む。口を開いて言葉を言おうとした瞬間、頭に手を乗せられた。
「いやー青春だね」
「関心関心」そう言って私の横を通り過ぎようとした迅さんの足がピタッと止まった。
少し顔がひきつって、それからぶはっと大きく笑い出した。
「あははっ、やるじゃん」
「は…？なにがですか？」
「こういうのは人に見せちゃまずいからな」
「絆創膏とかあったらいいんだけどさ」と人差し指でツンと首筋を小突く。
そこを触れるもなにもなくて、視線を落として実際に目を向ける。
「『俺のモンだ』って意味だろうね、太刀川さん」
赤い痕が一つ、首筋についていた。これ、確か米屋が言ってた気がする。
「学校あるんだろ？気をつけろよー」
背を向けたままそう言った迅さんは手を軽く振って立ち去った。
「……いつの間に」
寝ている間か。襟では隠せない場所につけられた“それ”を手で隠しながら控え目に歩く。
絆創膏を持ってたことを思いだし、ポケットから取り出す。
鏡を見ずに貼るのは難易度が高くて、貼った絆創膏には少し皺がついてしまった。
イヤな気はしない。やっぱりそれは太刀川さんだから許せるみたいで、そんな子どもを甘やかすような単純な理由で適当に納得する。
だけど、迅さんに言われなかったら正直危なかったかも。からかってくる奴らの顔が頭に思い浮かぶ。
廊下の窓から見える晴天を眺めながら、そのまま歩み続けた。
◇
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柳スウ - 太刀川さんの小さな気遣いカッコいい。 (2016年7月13日 16時) (
レス) id: 4dc969e182 (このIDを非表示/違反報告)
日菜(プロフ) - 前まで出水くんが一番好きだったのにこれを読んでから太刀川さんが好きになった……凄いいい話…･゜･(｡´ﾉω･`)。ｳｳｩｩ (2016年5月3日 20時) (レス) id: 65293e9234 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：§KAYA§ | 作成日時：2016年5月3日 19時
