不言感身。 ページ28
太刀川side
「よぉ、終わったのか？」
「あ、うん」
扉が開いて視界に入ったのは、ノートと筆箱を鞄にしまい込むAの姿。
テーブルに何冊か散らばってるノートを目にして、その内の一冊を手にする。表紙には「数学」と書かれている。
「うわ、なんだこれ」
いろんな文字が書き込まれてるそのノートは俺の理解できないもので。パラパラ捲りながらAの横に座る。
「太刀川さんには難しいでしょ」
「あぁ、さっぱり分からん」
ある程度目にしたそのノートを隣のそいつに返す。
ぎっしり詰まったその鞄にノートを押し込んで長いこと奮闘を繰り返すA。
「……なあ、好きだ」
俯かせてた目線を隣に向けて、そう呟いた。
「えっ！？……あ、うん私もだよ」
いつもの素っ気ない態度とは違って一瞬取り乱したそいつ。だけど視線はそのままでノートを突っ込むのに必死。
「そういうのじゃなくてさ……」
「あ、入った」そう達成感を口にするそいつの小さな肩を掴んで向かい合わせる。
「え……なに？」
「そーじゃなくて……、俺さ、」
『お前のこと好きなんだけどさ、付き合わねぇか？』
『……うん、いいよ』
なんの動揺も見せなかったそいつは、普段通りの態度で返事をくれた。
どこか引っかかるとこはあったけど、付き合えたんならいい、そうどこかで思ってた。
「お前のどこが好きか、って言われたらそりゃもう全部なんだけどさ」
呆気なく口を開けてるそいつはパチクリ数回瞬きする。
「お前といるのすっげー楽しいし、一緒にいれたらいいなって思ってた」
『そりゃ恋だよ太刀川さん』
いつだったか、迅がそう教えてくれたのを覚えてる。あからさまにニヤついて、でも何も知らない俺になにかと助言をくれたりもした。
「だから、あれだよ……俺はお前にずっと傍にいてほしい」
『なんで好きになったのか、そうゆうの言ってやった方が効果あるかもしれないっすよ』
こんなんでいいか出水。俺にはこれが精一杯なんだ。
理由とかそういうの言葉では説明できないけど、なんとなく身体で感じてるんだ。
すとん、と俺とAの間にそいつの鞄が落ちた。
ふと、鞄からそいつに視線を向ける。
……待てよ、なんだよそれ。
「……A？」
「ーーっ、ちょ、と待って…」
両手を前に出して顔を遮るA。
その細い指の隙間から見えるそいつのほんのり紅い頬。
……お前のそんな顔、初めて見たんだけど。
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零(プロフ) - 太刀川さん素直で大好きすぎる (2016年4月10日 1時) (
レス) id: 4463289b78 (このIDを非表示/違反報告)
いずみんLOVE - 出水が太刀川さんより男前だ・・・。 (2016年4月2日 15時) (レス) id: 61123b8b09 (このIDを非表示/違反報告)
soyon(プロフ) - 新作面白いです。風間さんの話とはまた違う感じが良いですね!頑張ってください！ (2016年3月21日 17時) (レス) id: 07f2e5561f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：§KAYA§ | 作成日時：2016年3月21日 1時
