酔言葉。 ページ15
Aside
ほら、結局こうなる。
「あぁー、じーん…」
私は迅さんじゃない、そう突っ込みたいけどかれこれ8回も同じことを言ってるから突っ込む気力もなくなる。
後先なんて考えない太刀川さんはあれから何本飲んだだろうか。ビールの他に焼酎とかものんでたし、すでに自我を保ててない。
「迅…つれてこー、い…」
ほぼ、私に体を預けてる太刀川さんは自分で歩く、という選択がない様子で。お互いふらつく足取りで暗い夜道をゆっくり進む。
「しっかりしてよ太刀川さん」
太刀川さん家に届けたらいいんだろうけど、居酒屋からだと私の家の方が近いから。
もう目の前にマンションが見えている。
「あーー、Aー…」
首にかかってる筋肉質な腕に力が入る。
「ちょ、く、苦し…」
太刀川さんの吐息が耳にかかって、それと酒の強いにおいもかかる。
「好きだー」
「はいはい」
そう返せばあからさまに不機嫌そうな顔をする太刀川さん。突然その場で足を止める。首に回ってるその腕を引っ張っても歩く気配がない。
「太刀川さん？」
「お前はさぁどーなんだよ」
酔ってるくせに真面目なトーンで、だけど呂律があんまり回ってない。
ふぅと息を吐いた太刀川さんは首元に顔を埋めてくる。髪が当たってそれが妙にくすぐったい。
「なあ、俺のこと好きか？」
珍しく弱い声。単に酔いつぶれて呂律が回ってないから、というのもある。
「うん、好きだよ」
ふと足を止めていることに気づく。街灯の灯りはチカチカと点灯して、少し不安を感じさせる。
「じゃなんでそんな幸せそうじゃない顔すんだよ」
目を開かせて驚く。
ぐいっとまた太刀川さんの腕に力が入った。
「ど、ういう、こと…？」
自分でも声が震えてるのがわかった。
すると一気に重みがかかる。耳元では寝息が聞こえて、腕の力も抜けていた。
「…ねぇ太刀川さん？」
問いかけても当然返事は来なくて。
数十mある道のりをゆっくりと意識のない太刀川さんを引きずりながら進む。
わかってたけど、わからないふりをした。
なにか重いおもしが乗せられた気がする。
今、太刀川さんに対してすごく申し訳ない感情が芽生えた。
無意識に太刀川さんの服をぎゅっと握りしめて自分家を目指した。
◇
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 171人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ワールドトリガー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
零(プロフ) - 太刀川さん素直で大好きすぎる (2016年4月10日 1時) (
レス) id: 4463289b78 (このIDを非表示/違反報告)
いずみんLOVE - 出水が太刀川さんより男前だ・・・。 (2016年4月2日 15時) (レス) id: 61123b8b09 (このIDを非表示/違反報告)
soyon(プロフ) - 新作面白いです。風間さんの話とはまた違う感じが良いですね!頑張ってください！ (2016年3月21日 17時) (レス) id: 07f2e5561f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：§KAYA§ | 作成日時：2016年3月21日 1時
