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「いや」
ガンッと音がしてドアはまた閉まらなかった。
押し出したはずのユンギが今度は完全に玄関の中に入って、そのままドアを閉めた。
私の部屋のドアだ。
「だからそうやって、勝手に決めつけるなよ」
ユンギの口調はしっかりしていて、私を真っ直ぐに見ていて
「元カノの事も、ケーキの事も、今だって俺が何にも言ってないのにそうやって…」
でもじゃあどうしろと。
ジョングクの言葉がどうとかじゃなく、ユンギが関係ないって最初に線引きをしたのに。
だから私なりにその線引きを守って、そこに立ち入らない様に、自分の気持ちを認めずにいたのに。
きっと自覚するよりもっと早い段階から。
ユンギがグレーの髪をくしゃくしゃと掻いて溜息を吐いた。
溜息吐くくらいなら早くここを出て自分の部屋に帰ればいいのに、なんで_____
「ムカつくんだよ、好きなのに」
ユンギの低い声が模った言葉に今度は私が小さな声を漏らした。
"は"でも"ほ"でも"え"でもない。
どれでもないけど、そのどれかの様な声。
それからまた前髪辺りをくしゃくしゃと強めに雑に掻いたユンギが窺うように私に目線を送って
「好きなんだけど、Aが」
もう一回言った、同じ言葉。
短い時間の間に自分の愚かさを呪ったり、悲しみに打ちひしがれたり、突然押し掛けてきたユンギに好きって言われて呆然としたり。
そんな状態で何が起きてるのかすぐに理解するのは不可能で、割と大きな右手で顔の大半を覆ったユンギの耳がやんわりピンク色なのだけを見ていた。
そのピンクがユンギの白い耳をどんどん侵食していくのと同時に私にも沸々と現実が押し寄せてきた。
「、ユンギさん」
苦しいくらいに心臓の鼓動が大きい。
手の隙間から私を見たユンギと目が合う。
「私…あの、あれ彼氏じゃないです、会社の同期で…、あと関係ないって言ったけど…関係あります、」
顔を覆っていた右手を離したユンギが困った様に俯いたけど、それでも柔らかい声色で'うん'と何回も頷いていて
「私も、好きなんで…ユンギさんの事…」
「、分かったから、ごめんって」
ユンギの右手が私を抱き寄せた。
今泣いてるのは悲しいからでも嬉しいからでもない、安心したからだ。
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かむ(プロフ) - にゃんさん» 最後まで読んで頂きありがとうございます🥹しかも新しいのまで!何回でも読み返して下さい!笑 (4月2日 15時) (レス) id: 5dfe42fd36 (このIDを非表示/違反報告)
にゃん(プロフ) - ユンギさんのお話最高でした!!最高すぎるのでもう一度読み返しに行ってきます!!(今更新中のお話もとても楽しく読んでます!私の日々の楽しみです!) (4月2日 12時) (レス) id: b48cf01a74 (このIDを非表示/違反報告)
かむ(プロフ) - u512さん» 私のペンになんて嬉し過ぎます🥲✨私もいつも終わらせたいような終わらせたくないような気持ちで書いてます!(笑)最後まで読んで頂きありがとうございます🥹 (4月1日 10時) (レス) id: fb7c0dcb39 (このIDを非表示/違反報告)
u512(プロフ) - やはり最高です‼️‼️かむさんペンになってしまいました‼️一生終わらないで欲しいと毎度思ってます‼️最強に拗らせられました‼️‼️これからも楽しみにしています🥹✨ (4月1日 9時) (レス) @page34 id: 37a21340a3 (このIDを非表示/違反報告)
かむ(プロフ) - 苺あめさん» 見てきたかのようななんて嬉しいです🥹こちらこそ読み続けて頂いてありがとうございます! (3月31日 20時) (レス) id: 03d417d136 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かむ | 作成日時:2024年3月27日 23時