行ったり来たり行き止まり[2]

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いや、いやいや。
いやいやいやいや。
例えメンバーの目からそう見えても、ユンギから直接そういう気持ちを聞いたわけじゃないだろうし。
かと言って目の前のジョングクに"直接聞いたんですか？"なんて聞ける訳もなく。

しかも私自身が目にした物もある。
元彼女の写真とか、返された荷物とかを見るユンギの表情とかそういうの。

しかもそのユンギが芸能人じゃなかったとしても、態度からして私の事を好きとかそういう風には＿＿＿＿＿


「Aさん」


コーヒーをすっかり飲み干したジョングクが、横に置いたままにしてあったバケットハットを被った。


「Aさんの気持ちは俺にも俺達にも分からないし、お節介かもしれないんですけど、シュガヒョンととりあえず仲直りしてあげて下さい」


「してあげるってそんな…」


そもそも喧嘩したわけじゃなない。
でもユンギとそれっきりなのは確かで、会いたくないとまで思っていたわけで。

バゲットハットを目深に被ったジョングクがぶんぶんと強めに首を横に振った。


「本当はユンギヒョンが先にAさんに謝らなきゃなんですけど、満場一致でそう思ってるんですけど！ヒョンが素直になれそうにないんで…！ずっとムスッとしてるくらいならさっさと自分から謝ればいいのにと思ってるんですけどね…」


演技のように大袈裟な深いため息を吐いたジョングクが'そういうわけで'と、どういう訳なのか。


「あの…スコーン、貰えなかったの相当やだったみたいなんで、持って行ってみて下さい」


どうせ私しかいないのにそこだけ小声で言って、元気良く立ち上がった。
ていうかスコーンの事まで。
ドユンが持っていた袋の中身をあの瞬間にユンギが見ていた事に驚きだ。

ジョングクは礼儀正しく'お邪魔しました'とまた深々とお辞儀をするから、私もそれと同じお辞儀を返した。
顔を上げたジョングクが'あ'と目を一層大きく開けて


「今日シュガヒョン、多分夜9時頃には帰って来るんで、スコーンよろしくお願いします」


そう言って'안녕히계세요'と綺麗な笑顔を残して帰って行った。

ホットケーキミックスで作るか薄力粉で作るか。
会いたくないと思っていたのに作る前提で動いてるから、ジョングクの言葉は効果覿面だったようだ。

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