行ったり来たり行き止まり[2]

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誤解が解けた事だけでも幸いなのに、ユンギからそれ以上の言葉を貰ってしまった。
だから満月のオルゴールとヘッドホンの封印を解いた。
全く単純だ。

でもここでまたユンギから貰ったこのヘッドホンを職場に持って行ったらやいのやいの言われそうで、惜しいけれど暫くは自宅で使うのみだ。

それでも、このヘッドホンでまたユンギの歌を純粋に心地良く聴けるのだから、気分は良い。


それからあっという間に内見の日が来て


「今日私ちょっと用があってこのまま定時で上がるね」


ドユンにそう告げるとキーボードを打つ手を止めたドユンが右手で"OK"と作って見せた。
ドユンは以前と変わらず接してくれていて助かっている、本当に。

それにどこに行くのかとか何しに行くとか、内見に関して聞いて来ないのも助かった。
それこそドユンだけじゃなくて、また同期の間で憶測が飛び交う事になるだろうから。

定時丁度に退勤してエレベーターに待つ間にカトクを開いた。


『끝났어요.(ックンナッソヨ)』
(終わりましたよ)


とりあえずそれだけ先に送った。
勿論連絡するのを念押ししてきた、ユンギに。

その後で何処で落ち合うかという旨のメッセージを打っていたのにユンギから電話が来て


「今どこ？」


応答するや否や直ぐにその質問が飛んできた。
幸い、エレベーターはまだ来ない。


「まだ職場です、今から下に降りる所で」


「一回帰って来れない？」


また。
ユンギの質問が急だ。

ユンギから電話が来るまでは家に帰るつもりはなかった。
私は職場から直接内見の家に向かって、ユンギはユンギで向かうとか。
それとも、内見する家の近所で待ち合わせしてから行くとか。

てっきりそうするのだとばかり思っていた。
ユンギに帰って来れるか聞かれるまでは、だ。
だから一度耳から携帯を離して時間を見る。

帰ってからでも間に合う時間ではある。
そうこうしてるうちにエレベーターが来てしまって、どうやら悩んでる時間はないという事のようだ。


「なんとか帰れます」


ユンギとの短いやり取りを無事に終えて、だいぶ人の多いエレベーターに乗り込んだ。

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