行ったり来たり行き止まり[2]

63 ページ13

写真立てを伏せてテーブルに置いたユンギが


「ていうか、やり直すなんて考えた事もないんだよ」


どこか迷う様で、でも落ち着いた声色で話し始めた。
その雰囲気に背凭れから背中を離して姿勢を正さずにはいられなかった。


「"向こうが浮気して別れたのに今更"っていう気持ちしかなかったから、家に来たのも訳分かんなかったし、もう要らないような荷物をAが受け取ったりしてて、俺的にはなんだよって」


呆れた笑いを微かに浮かべたユンギのその話しを聞いて、あれこれと記憶が蘇ってきた。
だから私に"何にも受け取るな"って…と。


「じゃあ…こないだ来た時は？」


話したくない事かもしれないけれど、そこまで知ったらその時の出来事も知りたいという欲が出た。
ユンギは一瞬だけ私を見て'あぁ'とまた鼻で笑って


「玄関先で話したよ、別に怒る気もなかったけど迷惑って言って。より戻したいって言われても浮気した相手の事なんかもう信じられるわけないし」


コーヒーを一口飲んだ。
その後で'それなのに'と私に目を向けて


「Aは勝手に勘違いして出て行くし、ケーキ2人で食べろとか言うし、しまいには部屋から男が出て来るし」


ちょっとだけ声のボリュームを上げて嘆く様に言った。
わざとだ。
ていうか最後のやつは別に私の落ち度じゃないんだけど。


「…それはユンギさんの勘違いですよね、私が勘違いしてたのと同じで」


敢えて指摘した。
お互い様だと、そこに関しては。
するとユンギが怪訝な顔をしながら


「まぁ…そうだけど」


"渋々"という言葉がぴったりな返事を小さい声で口にした。
それから拗ねた様にお皿の上のスコーンを少し大きめに口を開けて頬張った。

ジョングクが言ってたユンギの"拗ねる"が今分かった気がした。

それを見て笑いそうなのを堪える為に、私もやっとスコーンを一口齧った。
温め直したはずのスコーンはコーヒーよりもずっと温くなってしまっていたけど美味しいと思えたから良し。

64→←62

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す