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私の耳が正常に機能しているなら、さっきパクジミンが私の名前を口走ったのを聞いた気がする。
でも聴力検査なんてもう何年もしてないから定かではないのかもしれない。
いや、そんな馬鹿な。
「な、」
それでも自信がないのか口をパクパクさせたままやっと言えた人はその一文字だけで。
「あー名前？店長さんの旦那さんに聞いた」
尚も笑顔のままのパクジミンが変わりに真相を口にした。
やっぱり私の耳は正常だった。
別に呼ばれて減るものでもないけれど、こうして呼ばれてしまったら私も"失礼男"とは冗談でも呼べまい。
あんぐりと中途半端に開いてた口をやっと閉じて鼻でゆっくり呼吸を一つ。
「あの、顔は合わさないって聞いてたんですけど、それなのに名前知る必要あります？」
前回も今回も"うっかり遭遇"なだけだ。
今後はそうならない様にお互い気をつける事もできる。
パクジミンがうんうんと頷く。
「その顔を合わさないってお願いしたのは、俺の仕事の事もあるからその方がいいかなって思ったんだけど」
「けど？それと名前関係あります？」
「こないだ会ったら前に一回会った事ある人だったし、Aは変な色眼鏡で俺の事見てないし、別にもう顔を合わせないようにする必要ないじゃん」
"顔を合わせないようにする必要がない"？
もはや友達のようにパクジミンは私の名前を平気で呼ぶし、そもそもこの人そういえば最初から敬語さえ使ってない。
考えても考えなくてもパクジミンのあれこれは首を傾げる事柄ばかり。
私の眉間にそれが現れる。
が、パクジミンは'だからさ'と言葉が軽快だ。
「花を買うからには出来る限りちゃんと世話するから、もっとAに花の事聞かせてもらわないと」
'
と、わざわざ少し背をかがめて目線を合わせて、わざわざ敬語で言うパクジミンの笑顔は勝ち誇ったそれに見えた。
花の事は教える。
でも私は絶対名前なんか呼ばない。
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作者名：かむ
| 作成日時：2024年3月1日 21時
