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一ヶ月に一度必ず花束を頼んでくれるお爺さんの元へ無事配達を終えた後店に戻った。
'おかえり'と私を迎えた店長に言いたい事がある。
「いました、家に」
ボディバッグをカウンターの中の椅子に半ば投げる様に置来ながら出た言葉は、勢いが勝ってだいぶ端折ったものになってしまった。
だから店長が'え？'と眉を顰めて首を傾げたのはまともな反応で私は'いや'と訂正を入れる。
「顔を合わせないっていう配達の人、忘れてたって言って家にいたんですよ？通報されるかと思いましたよ…」
その後で何とかまともな文章で数時間前の出来事を語った。
「店長、家主が誰だか知ってました？」
ポケットの携帯を手にしてまたNAVERを開く。
検索ボックスに忘れもしない名前を両手の親指で入力する。
「あらージミンさんに会っちゃったの？貴重な体験しちゃったねぇ」
検索マークを押すのと同時に返ってきた店長の言葉は私には想定外のものだった。
"知ってましたか？"と聞いたのに"知らない"って返ってくる気がしていたのだ。
何となく。
だからまんまと呆気に取られて表示された検索結果より反射的に店長に目を向けた。
店長がふふふと肩を震わせて笑う。
「旦那の知り合いで私も数回しか会った事ないんだけどね、どうも昼夜逆転タイプで午前中起きてるって珍しいのよ」
「いや…店長知ってたんですか？！」
「うん、勿論。じゃなかったらジミンさんみたいな人がわざわざ私なんかの店に頼んだりしないでしょ」
店長はサラッと自虐を挟んだがそれを否定する心の余裕はなかった。
しかもそれと似た様な事をパクジミンの家で思ったなんて事も言えないし。
見る必要のなくなった携帯の画面がスリープ状態になった。
「ジミンさん、今彼女いないらしいよ」
今日の店長は想定外の言葉ばかり。
「……全然興味ないです、あんな人」
パクジミンが誰で芸能人でどうとかは一切関係ない。
ただ私には論外の話でしかない。
ピシャリと言い切った私に店長が'つまらない'と言ったけれど、そこで面白さなんか求められても困るというものだ。
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作者名：かむ
| 作成日時：2024年3月1日 21時
