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次の日もその次の日も、そのまた次の日も。
「ひまわり、全部で何本来ました?」
「10本」
「10本って事は10日間毎日って事ですよね」
'律儀な男'とカウンターに頬杖をついてジュンソが言った。
本当にその通りだ。
毎日姿も見せず白い向日葵だけもう10本。
一体何本持って来るつもりなのか。
それにいつまで正体を現さずにこうして向日葵だけを送り続けるつもりなのか。
累計10本目になった白い向日葵は翌日11本目になったわけだが。
「店長!見て下さいよ!」
その日はガラス戸にいつの間にか白い向日葵が挿してあって、ジュンソがいつになく興奮した様子で持って来たのだ。
いつもと同じ白い向日葵にリボンが巻かれている、だけじゃなく
「…あなたは、私の最愛の人…」
よく見るとそこにそう文字が書かれていた。
「これ、ひまわりの本数の花言葉ですよね?」
ジュンソの言葉に頷けなかった。
勿論合ってるんだけど、頷けなかったのだ。
頭の中に昔の記憶が過っていたから。
もしかしてこの向日葵はあの時の男の子なんじゃないかって、有り得ないのにそんな考えが浮かんで。
もう20年以上前の事で、たった一回しか会った事もないのに。
本当有り得ない。
でもまた翌日。
「店長!!!」
配達から帰って来たジュンソの手に白い向日葵があった。
「またリボンついてます!見て下さいこれ!」
それまで作業していたのを放り投げてジュンソに駆け寄って向日葵を受け取って目を向けるはそのリボン。
「…、私の恋人に、なって、下さい…」
累計12本目の向日葵の花言葉だ。
高鳴る心臓とは別に頭の中では"顔も知らない相手と付き合えるわけない"って冷静な自分もいる。
「店長、本当に心当たりないんですか?」
ジュンソの一言に首を横に振る。
こんな手の込んだ事する様な男は周りにいない。
むしろ今の私の周りにいる男なんかジュンソくらいしかいない。
"絶対覚えてるからね、約束ね"
ジミンの言葉が浮かんだ。
いや、まさか。
なんでジミンが。
ジミンがーーー
恥ずかしがって手の甲で鼻の頭を擦ってーーー
"誕生日おめでとう"
"俺が祝ってあげる"
ジミンが、まさか、ーーー?
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作者名:かむ | 作成日時:2024年3月1日 21時