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連日晴れていて少し蒸し暑いくらいだったのに、今日に限ってまさかの雨。
それでいて気温が少し下がって肌寒い。
いや、そう感じるのは私だけかもしれないけれど。
とりあえず一通りの事は終わらせた。
思ったより身体が動かなくて必要最低限の事しか出来なかった。
が、天気もあって客足が遠のいている現状。
今日の私にとっては好都合だ。
寒くない様にと長袖のTシャツだけ着てきたのだけれど、それでは足りなかった様で背筋がぞくぞくしている。
一度上着を持って行こうとしたが大丈夫だろうとソファに置いて来たのだ。
数時間前の自分を呪いたい。
何とか近くのカフェで買った温かいコーヒーとコンビニで買った解熱剤と水でしのぐ。
雨が強くなったのかBGMよりも雨が店のガラス戸に当たる音が大きく聞こえる。
少しだけ休もう。
少しだけ。
カウンターに突っ伏して目を閉じる。
「A」
誰かが名前を呼んでる。
向日葵を一本持って。
あの時の男の子?
「なんでこんな所で寝て…」
何言ってるんだろう、寝てないし。
今ひまわり畑にいて目の前に立ってるのに。
どうしてそんな困った様な顔してるの?
「…返さなくていいから」
何を?ひまわりを?
今くれたひまわりを返してほしいってーーー
「A?!」
大きな声が聞こえて咄嗟に目を開けた。
驚いて反射的に身体も起こして。
「大丈夫?!電話に出ないから心配になって来てみたら…」
「え、あれ…店長、あ、すいません私…」
心配そうな表情の店長が私を見下ろしていた。
当たり前だがお腹はすっかりぺちゃんこだ。
ぼんやりする頭で思い返してみる。
熱があってちょっとしんどくてうたた寝しちゃって、夢を見た。
「ひまわりを…」
寝惚けた独り言を呟くと私の身体から何かが落ちた。
「、何ですか、これ」
「え?Aのじゃないの?私が来た時はもうあったけど」
手に取ったそれは私の物じゃない濃いグレーのパーカー。
ジップアップの。
私の物でも店長の物でもないなら、誰の。
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作者名:かむ | 作成日時:2024年3月1日 21時