私のダイヤモンドリリー (ページ45)

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「店長の一番好きな花って何ですか？俺は彼女の誕生花のガーベラですかね」

聞いてないし。
と、遇らいたくなる所だがジュンソがしっかりと閉店前の掃除を済ませてくれたから免除。

「私はひまわり」

今朝入荷したそれを指差して言った。
黄色く綺麗に咲いた私の誕生花。

「昔ね、親がひまわり畑に連れてってくれた事があって、その時に見たひまわりが本当にものすっごく綺麗で感動して、誕生花とか抜きでひまわりが好きになったの」

'へぇ'とジュンソの返事は一見興味なさそうに感じるが、これでいて意外とちゃんと聞いてる奴で

「あ！あとあれですよね、確かひまわりも本数で花言葉変わるっていう」

こうしてちゃんと話題の波に乗れるのだ。
店長は人を見る目がある。

「で、店長はその好きなひまわりを誰かに貰った事、あるんですか？」

急に露骨にニヤニヤしたジュンソのそれは冷やかしというやつなのだろうけれど

「あるよ、一回だけ、そのひまわり畑に行った時」

自信満々に答えた。
なのにジュンソは'小さい頃はノーカウントで！'とか大きく罰を作って言うからまたその背中に拳をお見舞いした。

「って本当はそこだけよく覚えてないんだけど、誰かがくれたんだよね、誕生日おめでとうって言って」

またわざとらしく悶えて見せるジュンソを放って、やっと薄暗くなり始めた外を見ながら思い出す。

あれは誰だった？
私にひまわりをくれた人物。
父か母かと思い返してみたけれど、そんなに背が大きくなかった。

それでーーー

「、あ、男の子、だ。そう、それからひまわり一本、急に私の所に走って来て、誕生日おめでとうって」

「店長、ひまわり一本は確かあれですよ」

ジュンソと顔を見合わせて

「"一目惚れ"」

同時にそう言った。

そうだ。
少し照れ臭そうにして、でもハッキリと私の誕生日を祝って向日葵を差し出してくれた。
流石に顔は思い出せない。

手の甲で鼻の頭を何度も撫でていたんだ。
あの子は今どこで何をしてるんだろう。