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案の定。
いつもの花瓶には白い薔薇が3本挿さっていた。
「、一緒に入れますね」
ダイニングテーブルの上にそっと開けて茎を切りにかかる。
長居したくないのに、とライラックを持って来てしまった事を少し後悔した。
「ねぇなんで連絡」
「仕事してるんで話しかけないで下さい」
切り花用のナイフで茎を斜めに切っていく。
中綿も取らないとだし、皮も大きく削がないと。
「どうやって手入れ」
「水だけちゃんと変えてください、それだけです」
ジミンの言葉を遮る。
茎を切る手に力が籠る。
白い薔薇とライラック、両方の香りが合わさって混ざって更に良い香りが漂う。
薔薇とライラック。
ナリさんとジミン。
「さっきナリさんに会いました」
皮を剥くたびにライラックの小さい花達が揺れる。
「私、もう来る必要ないですよね」
手入れが済んだ順番に薔薇の花瓶に挿していく。
「え、なんで?」
「なんでって、だって私が来なくてもこうして花を持って来てくれる人がいるじゃないですか」
「いやこれはナリがたまたま持」
「ジミンさん、良くないですよ」
3本のライラックが薔薇と共に全部花瓶に入った。
豪華になったとても。
眩しいくらい。
眩し過ぎて息苦しい。
「私が前にここに来た時もですけど、簡単に女の人を家に入れたらダメですって、例えば仕事だとしても、それを嫌がる人がいるじゃないですか」
ゴミを纏めて帰る作業に移る。
突っ立ったままのジミンがどんな表情をしているのか、目を向けてないから分からない。
でもゴミを纏めて'じゃあ'と言った時に
「Aが嫌だって事?」
「いや、そうじゃなくて」
鼻で笑った。
今回はわざとじゃなく、本当に呆れて自然とそうした。
「私もう話す事ないし終わったんで、帰りますね」
この匂いからもこの空間からも、目の前のジミンからも早く抜け出したい。
苛々してる自分が理解出来なくてまたそれに苛々する。
向日葵の事なんか覚えてくれなくていい。
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作者名:かむ | 作成日時:2024年3月1日 21時