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「またそうやって…」
悪い冗談、面白くない悪戯ばかり。
ジミンの目に耐えられなくて語尾が弱々しく情けなく吐き出せず。
「、もう帰ります」
このままここに居ても仕方がない。
中に入ればまた人も音も騒がしくて落ち着かないし、外に出たら出たでジミンが横にいて
「待って」
踵を返した私を止めたのはそのジミンの声、ではなくて私の手を掴んだジミンの手だ。
「あのさ、こないだAが言ってたやつ、俺別におもちゃにしてるつもりないし、そんな事思った事もないよ」
何の話?
そう思ったが"おもちゃ"というワードにすぐにこないだ店に来た時の一部始終だと気付いた。
だから余計にまた落ち着かなくなる。
「、いや別にそれはもういいですし」
「いや良くないからこうやって話してるんだけど」
ジミンの手の力が少し強くなった。
「…Aの中で俺がどんなイメージなのか分かんないけど…Aに言った事、全部冗談とかじゃないからね」
私に言った事全部、とは。
"可哀想な君に"もそれに当てはめるべきか。
奇しくも、今の私はそれを判断出来る状態ではない。
ジミンの革靴が一、二回鳴ってすぐ近くに来たのが分かる。
「花も欲しいけど、今はそれがなくてもAに会いたいなって思うしAの笑った顔、もっと見たいなって思うよ」
'本当に'とその声が一番近くで聞こえた。
ジミンの手の力は極弱い物に変わっているのに、どうしてか手を振り解けずにいる。
俯いた私の目には自分のブーツの爪先が見えていて、その周りにはジミンと私の重なる影がある。
「、この服似合ってる、もっと見たい」
ジミンの声はこんなに低くて穏やかで柔らかい声だった?
左耳から聞こえた言葉に顔が紅潮していく。
いつもみたいに淡々とあしらって、手をベッと振り払えばいいものが。
何故出来ない?
風向きがまた変わってジミンの香水が私の全身を包んでいるみたいに香った。
影と同じ様にぴたりと私に目を固定するジミンのその目と視線がぶつかった。
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作者名:かむ | 作成日時:2024年3月1日 21時