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情報量が多過ぎて目も耳もチカチカして長時間は耐えられそうにない。
だからブーケを誰かに渡しに行ったジミンを見送った後で、外の空気が吸えそうな場所に出た。
騒がしいここからテラスが見えた時は店長の無事が確認できた時くらい安堵した。
「はーー…うるさ…」
何の為の場所なのか、何をすれば良いのか。
それよりも完全に私の様な人間が来る場所じゃない所に何故呼んだのか、という方が大きかった。
だからテラスの手摺りに凭れて青い空と春の風に当たると普通の場所に戻れた気がして落ち着いた。
「何してるの？」
微かに香る春の匂いを吸い込んでいた鼻に別の香りが入ってくる。
「、癒されてるんです」
私と同じ様に手摺りに凭れたジミンの香水の匂いだ。
「何に癒されてるの？」
「春ですよ、春、この気候、分かんないですか？」
「あったかいとか？天気がいいとか？」
「あーーーー勿体ない、勿体ないですね、春が分からないなんて」
目を閉じて深呼吸を一回する。
私にはこんなに春を感じられるのにジミンにはそれが分からないなんて。
この季節の繊細さは言葉では表現し難いし、むしろ言葉で表現するのは烏滸がましい様な気さえする。
それにしてもジミンの香水のホワイトライラックがやっぱり強い。
「呼んで良かった」
風向きが変わってより香水が強く香り出した時、髪を靡かせるジミンが言った。
「花くらい自分で買えばいいじゃないですか」
流れる雲は穏やかだ。
この気候みたいに。
「いや、花は口実、Aを呼び出す口実だから」
また。
ジミンの視線がぴったりくっ付いたまま。
「こういう姿見てみたくて」
ジミンの言う"こういう姿"は着慣れないワンピースにブーツ姿のことだ。
スウェットにデニムにスニーカーではなく。
面白半分にしては大掛かりな。
そう思う私にジミンはまた少し表情を綻ばせて言った。
「これで笑ってくれたら、もっと可愛いのに」
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作者名：かむ
| 作成日時：2024年3月1日 21時
