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情けない事に漸く意識が鮮明になり出したのは病院の待ち合い室にいる時だった。
ただ突然現れたジミンが迅速に事を進めてそれに従ってたら、ここにいた。
呆然と急に湧き出した不安にまた少しだけ手が震え出す。
店長と赤ちゃんは無事なのだろうか、と。
「これ」
震える手の上にコーヒーの入ったカップが乗る。
スリーブ越しに温かさが伝わって震えが治った。
「Aがいたから、良かったね」
私の隣に座って足を組むとそう言ったのはジミンで。
今し方コーヒーをくれたのもジミンだ。
長めの髪を一度かき上げるともう一度'良かった'と天井を仰いで言った。
何にも良くない。
私は何も出来なかったし、今もコーヒーが無ければ手が震えていたのに。
「…私じゃなくてジミンさんが来てくれたから」
俯いたまま温かいコーヒーカップを少し強く握る。
「だからじゃん、Aがあそこにいなかったら俺は行かなかったでしょ？だから、Aがいて良かったじゃん」
'意味伝わった？'とジミンがわざと私の顔を覗き込んでくるから、私の意思とは関係なく視線がぶつかる事となった。
ふにゃっと微笑んだジミンと、だ。
「…そういう意味じゃなくて…」
「俺だってAがいたからかっこつけてあれだけテキパキ動けただけだし」
「…かっこつける必要、ないですよね」
「あるよ！可愛いなって思った人がいるのに、なんでかっこつけないと思うの、逆に」
またこの人は何を言ってーーー
たったさっきまで自分の不甲斐なさに打ちひしがれていたのに、ジミンの突拍子もない話しで言葉を失った瞬間。
ジミンの向こう側のドアから店長の旦那さんが出て来て慌てて立ち上がった。
「大丈夫だったよ、念の為少し入院するけど、問題ないって」
旦那さんのそれを聞いてやっとちゃんと呼吸が出来た気がした。
良かった、その一言だ。
「ありがとう、Aちゃんが一緒にいてくれて本当に良かったよ」
'ありがとう'と旦那さんに頭を下げられて恐縮してしまった。
ジミンも旦那さんも、私がいたからって。
ふと隣のジミンを見上げると'ね？'なんて言って微笑むから調子が狂う。
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作者名：かむ
| 作成日時：2024年3月1日 21時
