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「いつ帰るんですか?」
「Aもうそれ5回目だよ」
「…いつ帰るんですか」
「そう言われるから尚更帰りたくなくなるんだよ?」
何故私はこんな大きいシートを持って来たのに膝を抱えて小さくなって座っているのか。
何故突然現れたパクジミンは私に代わって寝そべった挙句、持って来たチキンまで食べたのか。
パクジミンの黒い髪が春風にそよそよと揺れて気持ち良さそうなのと、サングラスで覆われて目こそ見えないものの整った輪郭に日差しが当たってそれなりに見えるのも気に入らない。
あとシートから出るやたら長い足も、だ。
もうパクジミンに言う事がなくなったし素知らぬふりをすればどうだろうかという案に辿り着く。
だからなるべく距離を取って再度シートに寝転ぶ。
目を閉じてみる。
葉と葉の揺れる音が心地良い。
「A」
下界を遮断する事さえさせて貰えないのか。
「…何ですか」
「お腹痛い」
「トイレ行って下さいよ、ていうかお腹痛いならそのまま帰った方がいいですよ」
「A、違…お腹マジ…」
そこで目を開けて隣のパクジミンに目をやる。
さっきまで飄々と春風に気持ち良さそうにしてたのに、お腹を抱えて細長い身体を丸めているパクジミンが目の前に。
只事じゃないやつ。
パクジミンの眉間に険しい皺が浮かび上がっていた。
「えっ、ちょっと…」
遂には俯いてパクジミンの顔が見えなくなる。
小さく呻き声のような物しか聞こえなくて。
パクジミンの肩に触る自分の手が汗ばむのが分かった。
「ちょっと…!ジミンさん!?大丈夫ですか?!私の声聞こえ」
「聞こえた」
俯いているパクジミンからの声。
「やっと名前呼んだ、ジミンさんって」
顔を上げただけじゃなくて肩に置いていた私の手をしっかり握る事までしたジミンの口元が笑っている。
もしかして、私、騙された?
唖然とする私を見上げるジミンは仰向けになるとサングラスを額の上にずらして。
「
私の手を握ったまま言うから、残ってる方の手で思いっきりお腹に拳をお見舞いした。
記念すべき私の人生第一回目のパンチだ。
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作者名:かむ | 作成日時:2024年3月1日 21時