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車のナビに住所を打ち込むと高級アパートが表示されて何となく納得。
人を家に上がらせてまで花を置けって言うんだから、どこぞの金持ちくらいしかそんな事頼まないだろうって。
いや、ていうか普通そこまで金持ちならなんていうか生花のアーティストとかそんな人に依頼するもんじゃないの?
という余計な思考回路のまま運転していたらあっという間に目的地に着く。
敷地に入る為のカーゲートを駐車場の管理人に開けて貰って地下駐車場の来客用のスペースへ。
「来客用とか」
花を抱えて降りた一言目に出たのは皮肉だ。
色んなアパートがあってそれなり高価なアパートの駐車場に行った事もあるけれど、来客用駐車場は初めて見たから。
勿論私の実家のアパートにもそんな駐車場はない。
流石、韓国内でもずば抜けて高いアパートなだけある。
広々としたエントランスを抜けてエレベーターで目的の階まで上がる。
ホテルと言われてもそのまま納得してしまいそうな造りだ。
それに本当に人が住んでるのかと思う程誰にもすれ違わなかった。
駐車場には高級車が並んでいたのは私の幻覚だった?と思う程。
どこもかしこも静か。
「どんな人なんだろ…」
エレベーターの動く音より私の独り言の方が大きい。
こうして来てみれば純粋にそんな疑問が浮かぶのは、人として普通のことだと思う。
顔を合わせる事がないから余計好奇心がくすぐられる。
かと言って余計な詮索はしないけれど。
エレベーターが目的の階に着いた事を知らせる音も妙に高級感溢れる音に聞こえた。
そんな馬鹿な事あるわけないのに。
目的のアパートの目的の部屋。
店長から受け取った紙の番号を押したら本当に開いた。
そりゃそうなんだけど、本当に来たんだって、何となく。
「…失礼しますよ」
家主はいないとはいえ、何も言わないで侵入するのは憚れるので靴を脱ぐ前にまた独り言だ。
寝れるくらい広い玄関スペースには誰もいない事をアピールするかの様に靴が一足も置いていない。
あるとしたら今私が脱いだ薄汚れたスニーカーだけ。
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作者名:かむ | 作成日時:2024年3月1日 21時