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また喋り過ぎたと気付いたのは蕾に見惚れたそのすぐ直後だった。
優雅な花の世界から現実に戻ったら、隣のパクジミンの様子を窺わないはずがない。
「…何ですか」
「いや、別に?本当に花が好きなんだなーと思って?」
語尾上がりだしまたニコニコしているパクジミンはチューリップの蕾ではなく、私を見ていた。
多分だけど私が話してる時からこの調子だったのだろう。
自意識過剰とかじゃなく、ただ単に私の反応を見て面白がってるそういう感じのやつだ。
「、終わったん片付けて帰ります」
水の中に茎の切れ端が沈む洗面器に手を掛ける。
「あー待って、俺がやるから」
「いや、私がや」
「いやいやこれ俺のだから、あと、さっき気が利かなかった分挽回させてくれる?笑」
何なんだその言い分。
と思ったけれど俺のと言われればそれは合ってるし洗面器に掛けた手を引っ込めるしかなかった。
気が利かなかったなんて気にしなくてもいい事を。
そんな事を言うなら今日女を連れ込んでいないだろうってダイニングテーブルのゴミを片付けながら思った。
手持ちのゴミ袋に雑に丸めて突っ込んだそれを今日こそは持ち帰る気で左手に握り締める。
「じゃあ、私はこれで」
さっさと帰ろうと戻って来たばかりのパクジミンに雑な挨拶をして目の前を早歩きで通過。
「ゴミ!置いてっていいって」
「私が嫌なんです、仕事なのでこれも」
それなのに無駄な押し問答が訳の分からない場所で始まる。
リビングでも玄関でもない、部屋と部屋の間だ。
「そんなのただゴミ箱に捨てるだけなんだから、そんな頑なに拒否しなくても」
「ゴミ箱に捨てるだけだから持って帰るんですよ、あなたこそそんな頑なにゴミ一つで何」
私の言葉は家に響いたインターホンの音によって途切れる事となった。
しかも2回鳴り響いた。
「、ゴミ、置いて行きなよね」
私より先に玄関に向かうパクジミンの捨て台詞である。
ゴミの事なんていいから早く来客対応すればいいのに。
そう思う間に3回目のインターホンの音。
私はとりあえずゴミを両手で抱えて中途半端な位置で壁際に寄って気配を消してみる。
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作者名:かむ | 作成日時:2024年3月1日 21時