私のダイヤモンドリリー (ページ13)

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パクジミン宅への配達は長くても二週間内で連絡が来る。
その連絡は勿論私にではなく店長にだけれども

「もうAが直接連絡受けた方が」

「だからぁ他の人の配達も店長が受けるのにあの人だけ私にするのおかしいですって」

そんなやり取りが2、3回あった。
本当に断固お断りである。
今までもこれからも私の仕事に客との個人的な連絡業務は含まれていない。

パクジミン宅への配達も3、4回目ともなれば慣れたもの。
結局言われた通りエントランスのセキュリティも自分の家の様に卒なく潜り抜ける事にした。

それどころか図々しく家主在宅と知りつつ玄関まで勝手にナンバーを押して開ける所までセットだ。
面倒って言われたし面倒なやり取りをするくらいなら、と考えた結果だ。

「失礼し」

ただ今日少し違っていて思わず声も入ろうとした足も静止してしまった。

何もない玄関、ではなく、誰かの靴がある。
しかも女物。

もしかして来ちゃいけないタイミングだった？
と思いつつも今日のこの時間を指定してきたのはパクジミンだし、まさかまた忘れてたとか－－－

なんてフリーズしたまま考えてる私の耳に甲高い声が室内から聞こえてきた。
しかも少しずつそれが大きくなる。
近付いて来ている。

「あ」

情けない事に頭だけあたふたして隠れるとも逃げるとも出来ないままフリーズしていたのだ。

声を出したのは私ではなくこちらに近付いて来た甲高い声の主であろう女で、その後ろにはパクジミンがいた。

「あー例の花屋さんね！じゃ、私はお邪魔しましたー」

女はさっさと女物の靴を履いただけでなく、パクジミンに手を振って私にも手を振って帰って行った。
薔薇の匂いがした。
私が今日持ってるのはチューリップだから女の香水の匂いだろう。

ドアが静かに閉まった後でパクジミンが

「良いタイミングだったね」

と微笑んでいて

「…それどういう意味で良いタイミング(・・・・・・・)なのかなんて聞きませんからね」

私は真顔を貫いてやっと靴を脱ぐ。

女の一人や二人や三人いてもおかしくはないだろうけど、何もこんな日に連れ込まなくても。