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アラサーにもなると男に振られたくらいでは泣かなくなるのか。
一日中メソメソと寝室に閉じこもって泣いていた学生時代の自分はもういないのだ。
強くなったもんだ。


「A?聞いてる?」


「、え?あー何でしたっけ…?」


店長が呆れた顔で"切り過ぎないでね"と私の手にある花と花鋏を指差した。

でもそれは気もそぞろな私に対してのただの忠告で、本題は別だ。


「定期便の配達、できそう?」


そうそれだ。
薄っすら一部分だけ聞こえた気がする。


「構わないですよ、免許ありますし」


「と、今回ちょっと特殊なの」


「特殊?」


店長には申し訳ないがここでやっとこの話に集中した。
花と花鋏を一度手放す程。


「配達しに行ったらお家の中に入って花を花瓶に入れるところまで、お願いしたいのよ」


確かに特殊だ。
でも特殊過ぎて首を傾げてしまう。
家政婦でもないのに家の中に入ってあれこれやるなど、当然今まで一度たりともした事がない。


「それって…家主の希望なんですか?」


それ以外ないとは思うが念の為の質問だ。


「勿論、だからドアのナンバーも預かり済み」


私があれこれ聞く事を考えていたのか店長は既にもう用意周到な先回りをいくつかしていた。
だからすぐに'それから'と続けて。


「指定の時間に行けば家主はいないはずだから、花だけ置いてすぐ帰ってくれば大丈夫」


そう言って4桁の番号と住所が書いてある紙を花鋏の横に置いた。

家主はいないという言葉にホッとした。
どんな人かはさておき仕事とはいえ他人の家に入り込む瞬間家主に遭遇、なんて避けたいに決まってる。


店の配達がある時は店長ではなく私が行く事になっている。

免許がある事もそうだが店長は身重である。
近場は自転車で、なんて一度怖い事を言うから絶対にやめてくれと店長の旦那さんと二人で説得したりもした。

この花屋"Longing"のそんな店長との付き合いも元彼より長いわけで、配達に行く事くらい大した事ではない。


「明後日の午前10時、早速よろしくね」


私の肩をポンと叩いた店長がまた重い水を運ぼうとするから慌てて駆け寄った。
油断も隙もない人だ。

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設定タグ:BTS , ジミン , 防弾少年団   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:かむ | 作成日時:2024年3月1日 21時

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