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「ねぇA」
朝。
出勤して割と重めのバッグをデスクの上に置いて、コートを椅子に掛けた直後。
隣の先輩…ジミンの彼女に話しかけられた。
正直昨日の今日でかなり気が重いが、話さないわけにはいかない。
休めば良かったかな、なんて社会人にあるまじき事を考えつつも'はい'と返事を返した。
「Aってジョングギの事好きだったの?」
私より先に私達の周りがどよめいた。
それ程先輩の声が少し大きかったという事だ。
あっという間にこの部署の大半に広まり、私に容赦ない視線が突き刺さる。
「いや、それは…」
当然、言葉に詰まる。
私が好きなのはジョングクではない。
あれはあの瞬間私を庇う為にジョングクが咄嗟に吐いた完全な嘘だ。
私が好きだったのはジミン。
あなたの彼氏です、なんて言えない。
'ジョングギと?'
'誰が?A?'
'付き合ってるって?'
ざわざわと落ち着かない周りの好奇心の声があちこちから聞こえて辺りを見渡す。
「、あの、それは…!別に、冗談っていうか…」
ここで嘘と言っても問題はないのか。
それとも嘘と言ったらまたなんでジョングクはあんな嘘を?って新しい疑問が生まれる可能性もあるんじゃないか。
先輩は椅子に座ったまま煮え切らない私に表情を曇らせているし、周りもなんだなんだと騒ぐ事をやめないし、なんでこんな事に−−−
「あの」
遂に気持ちが溜息となって出てしまった時。
騒つく部署のスタッフをたったその一言で黙らせた。
大きな目をキョロキョロさせたジョングクが'失礼します'と言ってスタッフをかき分けてやって来た。
そして私の前で止まる。
「、ジョングガ、なに…」
「あーいや昨日車に忘れ物してたから、困ってるかなと思って、これ」
太めのデニムのポケットから確かに私の口紅で間違いない物を取り出して'はい'と差し出した。
英字タトゥーの入った右手だ。
'はぁ'なんて気の抜けた返事をするとジョングクは'じゃあ'と言って踵を返す。
少し伸びた髪に寝癖が付いていてそれが生きてるみたいに揺れた。
「あー、それから」
数歩行ったところで足を止めたジョングクが振り向いた。
「昨日のそれ嘘です」
先輩さえもジョングクに釘付けになっていた。
当然他の全員もだ。
「俺がAを好きなんです」
'じゃあ'と言って今度こそ本当に出て行ったジョングク。
大体の人間が言葉を失くして中途半端に口を開けていた。
私もその一人だ。
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かむ(プロフ) - あこさん» それは作中のジミン氏が泣いて喜ぶやつ言葉ですね🥹最後まで読んで下さってありがとうございました! (2月29日 7時) (レス) id: 40531361f3 (このIDを非表示/違反報告)
あこ(プロフ) - 最後の最後でジョングクと付き合うのは予想してなかったです😖⤵ジミンとくっついて欲しかった🥺次はジミンが幸せになるお話をお願いしますm(_ _)m楽しみにしていますね(*^^*) (2月29日 5時) (レス) @page40 id: c61c62757d (このIDを非表示/違反報告)
かむ(プロフ) - Tearさん» レスが遅くなってすみませんㅜㅜこちらこそ最後まで読んで下さってありがとうございます!! (2月27日 21時) (レス) id: 40531361f3 (このIDを非表示/違反報告)
Tear(プロフ) - かむさん…最高です!本当に最高しか言えないです!素敵なお話ありがとうございます! (2月24日 22時) (レス) @page40 id: f87fa27e4a (このIDを非表示/違反報告)
かむ(プロフ) - senra1003さん» いやいや恐れ多いですぅぅ…ㅜㅜでもそうやって言って頂けると本当に励みになります(;ω;) (2月23日 9時) (レス) id: 40531361f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かむ | 作成日時:2024年2月20日 19時