月に叢雲花に風[2]

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ジミンと付き合ってる先輩の事なんて嫌い
私を好きにならないジミンなんて嫌い
私に本当の事を教えてくれなかったジョングクなんて嫌い
いっそそう思えたら楽なんだろうけれど。
そのどれもない。

何故泣いたのかと問われたら悲しいから苦しいから。
それも嘘ではないけれど、こんな馬鹿で惨めな私を否定しないどころか認めてくれたジョングクの言葉が嬉しかったからだ。


「送ってくれてありがとう」


泣いたせいで酷い鼻声だ。
それに顔もぐちゃぐちゃだろうけど、もうそんな事どうでもいい。

窓を全開にしているジョングクが'아니에요〜(アニエヨ〜)'とわざと敬語を使って戯けてみせる。


「これ、洗って返すから」


涙だか鼻水だかでややしっとりとしたタオルは私が勝手に持ち出した。
ジョングクは洗わなくていいと言ったけれど、置いていけるはずがない。

タオルを掲げて言った私にジョングクはただ黙って頷いて


「寒いんだから、早く帰りな」


と言ってただ単に振ってるのか追い払ってるのか区別し難い手の振り方をした。
でもジョングクの言う事は間違ってない。
まだ時々ズッと鼻を啜ってるのは泣いたせいもあるが、寒いせいでもあると思う。

'分かった'とだけ言って私もジョングクに負けず劣らず適当に手を振った。


泣いてる間、ジョングクはそれに関する事は一切言わなかった。

ただ時々美味しそうな店を見つけたのか'あーお腹すいた'とか目新しい物を見つけたのか'え？何あれ？'とか私からの返事がなくても続けていた。
それから鼻歌を歌ったり。

あと数歩で家のドアという所でタオルをどうやって返そうか、という問題に気付いて足が止まった。
連絡先も知らないのに。

もうとっくに居ないかもしれない。
でもそれより"どうしよう"と突発的に思った事の方が勝って今来た道を振り向いた。

運転席の窓を開けたままのジョングクと目が合った。


「ジョングガー！これ！タオル！どう、…」


さっきよりも高い位置でタオルを振って見せた私の言葉が途中で途切れてしまった。

だって寒いって言いながら帰ってもないし、それどころかなんて顔でこっちを見てるんだろうって。
なんでそんなに頬を緩ませて笑顔を向けて−−−

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