月に叢雲花に風[2]

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ジョングクの最後の締めの台詞は


「俺はやるって決めたらやる男だよ」


で、本当は眉と口のピアスや腕のタトゥーはおろか鍛えてる筋肉まで事務所からは良く思われなかったけどやったというエピソードを聞かされた。
悪いとは思うけど今はそれは一旦おいておく。

掻い摘んで言えば個人情報を聞き出して何とか関係者を説得して思うがままに飛行機に乗って実家に突撃訪問して母親から居酒屋の場所を聞き出して


「それで今ここにいる…って事、ね」


再確認の私の言葉に飽き飽きした様に頷くジョングクの態度は当然だとは思うけど、本当に行動力が凄すぎて。

複雑で暫く思い考えてしまいそうな情報もあったけれど、とりあえず"過ぎた事"になった。
そんな気がした。
ジョングクがここにいる理由も知れたし。

だいぶ温くなったコーヒーを一口。


「それでヌナは？」


最後の薬菓を頬張ったジョングク。
結局ジョングクが全部食べた事になった。


「私は…別にもう終わった事だから、付き合うとかは、考えてないかな」


"別れた"
そう聞いてドキッとはしたがそれはもう好きのそれじゃなかった。
衝撃的な方のそれだ。

ジョングクからは'そっか'とだけ返ってきた。
何だかその返事も懐かしい。
肯定も否定もしない、ただ黙って聞いてくれる感じ。
それが凄く心地良いんだ。


「ていうかヌナ」


横顔のジョングクが凛々しい表情で私を見る。


「俺が、最初から、何っっっっ回も気をつけてって言ってたのに、今度はまた日本の男に何か言われてたじゃん？携帯持ってさ、連絡先とか言われてたんでしょ？」


抑揚も速度も凄い韓国語で一気に捲し立てたと思ったら


「ヒョンも俺もヌナの連絡先知らないのに、なんであんな大した事ない奴に連絡先聞かれて断れもしないで…あーまったく…あそこで俺が来なかったらどうしてたつもり？」


と続けてそこまで言って二回目の'아이고 참…(アイゴ チャム…)(まったく…)'を呆れた表情と溜息つきで言った。
あまりの勢いに圧倒されて何も言えない私にジョングクがまた溜息をついて


「いや、ヌナが無事でよかった、」


そう言って本当に安堵した様な笑顔を見せるから、また少し緊張してしまった。

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