74 ページ24
'誰にも何も言わず辞めるなんて'
と部長にも言われたがどうにかお願いしてそうしてもらった。
私が辞めた事などすぐに広まるだろうが"辞める"事が明らかになったらジョングクにも噂が行きかなさそうで。
そうなればまた周りが有る事無い事言い始めて噂の独り歩き。
もうこれっきりだというのにまたジョングクに余計な迷惑をかけたくなかった。
この一ヶ月、ジョングクにもジミンにも会わなかった。
顔を合わせる様な仕事もなかった。
幸いだと思った。
どちらかにしても顔を合わせれば私の計画は失敗に終わってしまう可能性もあっただろうから。
「…家が、広い…」
家具が殆どなくなってこれから梱包して配送待ちの段ボールがいくつか残った家の中は、ここに引っ越してくる前の姿に戻った。
物が如何に多かったかを痛感すると共に、やはり少し寂しさも募る。
インターンから頑張って正式入社した会社、韓国での生活、身につけたスキル。
どれも私にとって大切な物だった。
でもそれを手放さなければならなくなったのは、紛れもない私自身のせいだ。
今日中に荷物を配送して夜の便で日本に帰らなきゃいけないのに、感傷的になってる場合ではない。
止まっていた手を動かそうとした時、フローリングに転がっている携帯が鳴る。
「もしもし、うん、今片付けしてるよ」
母からの電話だ。
両手を使いたくて肩と頭で挟んで母と話す。
「うん、何時だっけ…後でラインするよ、うん、あ、それからあの…」
言いかけた言葉が携帯と一緒に床に落ちた。
ゴンと鈍い音を立てたけれど私の耳には聞こえなかった。
手が震えた。
開け広げられている段ボール箱の中に見覚えのあるタオル。
何の変哲もないタオルだけど違いが分かってしまう。
「…返し忘れてた…」
車の中で柔らかく微笑んでいたジョングク。
もう会う事はない。
会いたい。
携帯からは何か言っている母の小さな声が聞こえていたけれど、タオルで顔を覆って溢れ出る涙と漏れそうになる声を抑える事しか出来なかった。
ジョングクの匂いはもうそこにはなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 315人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かむ(プロフ) - あこさん» それは作中のジミン氏が泣いて喜ぶやつ言葉ですね🥹最後まで読んで下さってありがとうございました！ (2月29日 7時) (
レス) id: 40531361f3 (このIDを非表示/違反報告)
あこ(プロフ) - 最後の最後でジョングクと付き合うのは予想してなかったです😖⤵ジミンとくっついて欲しかった🥺次はジミンが幸せになるお話をお願いしますm(_ _)m楽しみにしていますね(*^^*) (2月29日 5時) (レス) @page40 id: c61c62757d (このIDを非表示/違反報告)
かむ(プロフ) - Tearさん» レスが遅くなってすみませんㅜㅜこちらこそ最後まで読んで下さってありがとうございます！！ (2月27日 21時) (レス) id: 40531361f3 (このIDを非表示/違反報告)
Tear(プロフ) - かむさん…最高です！本当に最高しか言えないです！素敵なお話ありがとうございます！ (2月24日 22時) (レス) @page40 id: f87fa27e4a (このIDを非表示/違反報告)
かむ(プロフ) - senra1003さん» いやいや恐れ多いですぅぅ…ㅜㅜでもそうやって言って頂けると本当に励みになります(；ω；) (2月23日 9時) (レス) id: 40531361f3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かむ
| 作成日時：2024年2月20日 19時
