◆*36*◆satoshi ページ36
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Aが目の前を走り去っていくのを
まるで意識がどっか違うとこに飛んでったみたいに、
漠然としながら見てた
スローモーションみたいにふわりと流れていくAの髪の毛から香る花の匂いが鼻を霞めたら、
切なさに心臓を握りつぶされそうになって
その反動で
左手に持つショートケーキの箱が微かに揺れたような気がした
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あんなフラフラした状態で行かせていいわけないのに
すぐに追いかけて止めてあげなきゃいけないのに
足が鉛みたいに動かない
熱あんのに何考えてんの？って…
今そんなになってまで行かなきゃいけない理由はどこにあんの、って…
そんな風に正論付けて頭の中で繰り返される疑問はきっと
"Aが心配だから"じゃなくて
多分、
ただの"アイツへの嫉妬"なんだ
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こんな胸が軋む音くらい、今までだって何百回と聞いてきたのに
振り払われた腕に今まで以上の喪失感を感じてしまうのは
普段より素肌に近い、あどけなさの残る彼女の顔が
初めて"好き"だと自覚したあの頃を
思い出させたからなのかな…
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暫くAの部屋のドアの前で立ち尽くして
苦しさの滲む切なさは徐々に
彼女の身に何かあったら…って、そんな不安へと変わっていった
ショートケーキの箱をドアノブに掛けて
ポケットから取り出したスマホの電話帳を、歩きながらタップする
行き先は分かってるけど場所は知らないから…
A以外で
今のアイツに会ったことがある"彼女"に
逸る想いを抑えながら電話を掛けた
.
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智「…っ、…Aっ…！」
彼女に教えてもらったお店の前には
知らない男の腕の中に倒れ込んでるAの姿があって
…あぁ、やっぱり引き止めるべきだったな…って
一瞬でそう思えちゃう自分の単純さに笑えた
ナオキ「ぁ…、えっと俺、この店のバーテンダーで…」
顔を真っ赤にしてｵﾛｵﾛしてる彼の腕から、有無を言わさずAを奪い取って
触んなよ…って、そう思いながら彼女をお姫様だっこしてる自分が
いつか、慣れない行為に照れながら彼女を運んだあの日の自分と重なって見えたのは
純粋そうな瞳の奥に
あの
太陽みたいに笑う、まぁるい目を思い出したからかな…
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よいこの味方〜新米保育士物語〜
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