◇*15*◇ ページ15
.
時間が巻き戻って
あの頃と同じ風が
二人の髪を揺らす
.
制服のスカートがひらひら靡いて
カズの学ランの裾を優しく捲し上げる
目に映るもの全てがｷﾗｷﾗして見えて
毎日が幸せで満ち溢れていたあの頃
あなたが隣にいるのが当たり前で
一緒にいるだけでどんどん大きくなっていく好きって気持ちを
隠すのに必死だったあの頃
.
『戻りたい』
何度もそう思った
だけど
そんな夢みたいな話は無いんだと
いつだって自分に言い聞かせて
それなのに胸の片隅では
いつだって
夢が叶うことを願っていた
.
『戻れる』
だから
あなたとまた会うことが出来て
あなたの声を聞けて
この満開に咲く恋の花は
ホンモノだったんだって…
私たちはもう一度
幸せだったあの頃に戻れるんだって
そう…
信じて疑わなかったんだ
.
.
和「……久しぶり」
「…」
和「…3年ぶり…くらい？」
「……う、うん…」
和「…ﾌ…懐かしいな…」
「…ぇ？」
"懐かしい"？
どうして…昔の思い出を思い返すように言うの？
今の今まで忘れてて、久しぶりにちらっと思い出したみたいに…
.
「…っ…私は…懐かしくなんかないよ？」
だってずっと思ってたから
あなたのことを忘れた時なんて一度もなかったから…
カズは…そうじゃ…ないの？
.
.
和「……あぁ…もしかして、ずっと待ってた？」
「……ぇ？」
なんで…そんなこと言うの？
待ってたよ、ずっと…ずっと待ってたよ…
そう言いたいのに
口がぴくりとも動かないのは多分
その冷たく突き刺さるような瞳のせい
目が合ってるはずなのに
あなたは私を見てない
笑ってるはずなのに
あなたはちっとも笑ってない
ねぇ…なんでそんなに色の無い目をしてるの？
あなたは何を見てるの？
.
「…カズ…それって…
ナオキ「和也ー！いつまでごみ捨てしてんだよ！」
開いた裏口の向こうから、カズを呼ぶ声
和「…じゃ俺仕事中だから」
「えっ…待っ…」
一度も振り向くことなくお店の中に入っていく背中を
私はただ
眺めることしか出来なかった
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よいこの味方〜新米保育士物語〜
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