Episode9-4 神頼み ページ38
その後は魔物が襲ってくることもなく、平和に時が過ぎて行った。
みんなもさっきの不思議な体験を疑問に思っているみたいだったけど、さほど深く考える子はいなかった。
「……亜実ちゃん、帰ろ」
「はい、Aさん」
あくまで『亜実ちゃん』として誘った。
アミちゃんとして誘っちゃいけない。別行動だって決めたもの。
階段を下りて、下駄箱で学校指定の白い運動靴に履き替える。
まだ下駄箱にはたくさんの白い靴が残っている。
みんな部活動なのだろう。運動部の子でも教室の前で友達を待ってるとかだから、上履きの数が少ない。
つくづく、帰宅部でよかったな〜と思う。
だって誰にも怪しがられずに魔物を退治できるから。
校門を出て、少しだけ亜実ちゃんと肩を並べて歩いた。
でも一本目の交差点で亜実ちゃんの足の向きが変わった。
「Aさん、私はここで。
今日はこっちの方角を回ってみます」
その言葉は『アミちゃん』のものだった。
「分かった。じゃあ私は一度家に帰ってから反対側を回るね。
また明日！」
「はい！ また明日！」
アミちゃんが颯爽と去っていく。
いい表情だった。
強くなる決意をしたから、あんなにいい表情ができるんだ。
……帰ろう。帰ってすぐ、魔物退治に出よう。
左足で勢いよくアスファルトを蹴った。
「ただいま……ってあれ？」
普段掛かっていない鍵が掛かっている。
そっか、母は外出中だった。
鞄から鍵を取り出し、「カチャっ」となるのを確認する。
急いで自分の部屋に行き、鞄をベッドの上へ放り投げ、動きやすい格好に着替える。
さて、魔物退治に出発しよう。
母には無断だけど、家を留守にする。
「アリアドネ、魔物の気配、する？」
鍵を掛けながら小声でつぶやく。
が、返事がない。
「アリアドネ……？」
もしかして、いない？
「しょうがない」
ひとまず、神岡神社――『秘密基地』――に行ってみよう。
アミちゃんがいなくても、何か手がかりがあるかもしれない。
神岡神社に来てみたけど、いつにも増して静かだ。
なんか変な感じ。アミちゃんもアリアドネもいないもの。
私一人だけ……寂しいけど、これを耐えないと。アミちゃんに頼り過ぎちゃダメだもん。
静かすぎてそわそわするから、とりあえず何かしよう。
神様に祈っておこうかな。
賽銭箱に5円玉を入れて、2礼2拍手1礼をする。
「強く……強くなれますように……！」
神頼みって効果あるのか分からないけれど、気分が落ち着いた気がする。
Episode10 見つけて欲しくないのかもね→←Episode9-3 他人の目
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
頂志桜(サム)(プロフ) - 怪盗ゆかりんさん» ありがとうございます！地道に、頑張っていきますね！ (2016年8月24日 12時) (
レス) id: f46217bc92 (このIDを非表示/違反報告)
怪盗ゆかりん - とても良いと思いますよ。オリジナル物では大体ファンタジーじゃない恋愛系が多いのでとても良いと思います。なので頑張ってください。 (2016年8月24日 11時) (レス) id: 9e404a3c93 (このIDを非表示/違反報告)
らむ音(プロフ) - 頂志桜さん» じゃあ、オリジナルで！ (2016年2月11日 14時) (レス) id: 38cad45099 (このIDを非表示/違反報告)
頂志桜(プロフ) - らむ音さん» オリジナルのほうがいいかなーと。どうでしょうか (2016年2月10日 22時) (レス) id: b2ab2df1fb (このIDを非表示/違反報告)
頂志桜(プロフ) - らむ音さん» 敬語なのはなんとなく……です。普通のほうがいいかな……？ (2016年2月10日 22時) (レス) id: b2ab2df1fb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：頂志桜 | 作成日時：2016年1月25日 1時
