Episode3 絶対に負けたくない ページ11
アミちゃんは、戦いが終わってもまだ、床に突っ伏している。
「大丈夫……?」
「いったい何が……私を倒してしまうなんて……」
アミちゃんは驚きと悔しさが混じり、泣いていた。
《この子に説明してあげて。Aが勝ったのは、この子のおかげだって。この子が私を起こしてくれたからだって》
アリアドネが優しい口調で私に指示する。語りかけているのは、『A』だけじゃなくて、『アミちゃん』にもかもしれない。
――分かった。
私はアミちゃんに寄り添い、アミちゃんを思いっきり抱きしめた。
「アミちゃん。私が勝てたのは、私の実力じゃない。実力だけだったら、アミちゃんが圧勝だったよ」
アリアドネと同じよう、優しい口調で。
「……何が言いたいんですか? 実際私は負けたんです。あなたのほうが強かった。だからあなたが勝った。そうじゃないんですか?」
《この子、無意識に私を起こしてくれたのか……》
私はゆっくり首を横に振った。微笑みながら。
「私が強くなったのは、アミちゃんが私に刺激を与えてくれたから。アミちゃんのおかげで、私は自分の力に気づけたんだよ」
「私は、何もやってないです」
無罪を主張する容疑者みたいなコメントじゃないか、アミちゃん。こういう時は素直になっていいんだよ。
思いを張り巡らせても、言葉にはできない。でもなぜか、私にはアミちゃんに気持ちが伝わっている気がした。
気のせいなのかもしれないけど、ううん。きっと気のせいじゃない。
「……ありがとうございました。もう大丈夫です。あと、お騒がせしてすみません」
しばらくたって、アミちゃんの気持ちが落ち着いてきたようだ。
「いやいや。謝る必要はないよ。だって、仲間だもん」
「……!」
アミちゃんの目が小刻みに動いている。それは涙の続きじゃなくて、嬉しさによるもの。
アミちゃんは数十秒うつむいて、顔をあげてすぐに発言した。
「たとえ今回が私のせいでAさんが勝ったとしても、私、次からはもう負けたくありません。魔物を倒す前にもっと力をつけなきゃいけないし、強いからこそ負けたくないです。
絶対に負けたくない。魔物にも、あなたにも!」
アミちゃーん。あのー、私と魔物を並列して言わないで〜。
しかし、アミちゃんの表情は、明るかった。いい笑顔だった。
「私だって、アミちゃんに負けたくないよ」
「それはどうでしょうか。
私が、あなたと私自身の運命の風向きを変えてみせますから! 私、負けませんよ」
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頂志桜(サム)(プロフ) - 怪盗ゆかりんさん» ありがとうございます!地道に、頑張っていきますね! (2016年8月24日 12時) (レス) id: f46217bc92 (このIDを非表示/違反報告)
怪盗ゆかりん - とても良いと思いますよ。オリジナル物では大体ファンタジーじゃない恋愛系が多いのでとても良いと思います。なので頑張ってください。 (2016年8月24日 11時) (レス) id: 9e404a3c93 (このIDを非表示/違反報告)
らむ音(プロフ) - 頂志桜さん» じゃあ、オリジナルで! (2016年2月11日 14時) (レス) id: 38cad45099 (このIDを非表示/違反報告)
頂志桜(プロフ) - らむ音さん» オリジナルのほうがいいかなーと。どうでしょうか (2016年2月10日 22時) (レス) id: b2ab2df1fb (このIDを非表示/違反報告)
頂志桜(プロフ) - らむ音さん» 敬語なのはなんとなく……です。普通のほうがいいかな……? (2016年2月10日 22時) (レス) id: b2ab2df1fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:頂志桜 | 作成日時:2016年1月25日 1時