ZUNOUOU ページ4
その日はオフィスで、みんなでテレビを見ていた。
結果は知ってるし、井上さんが今日こっちに来てるわけじゃないが、それでもオンエア日は見てしまう。ミーハー女子を笑えない。
テレビの編集は露骨というか、視聴者に解かせる配慮もなく、訳の分からない天才が難問を解く様子をそれっぽく見せているだけ。
1回戦も終わりかけに近づいた頃、水上さんがこれ見よがしなため息をついた。
「頭脳王見てると、東大王がだいぶマシに見える」
「……そりゃ僕らあっての番組だから配慮してくれてるんじゃないですか」
「でも、頭脳王をそういう番組に近付けることはできると思うよ。バラエティ要素抜いて全部競技クイズにしろって言ってるわけじゃない」
大きく表情が変わる人ではないけど、静かに怒っているのがわかった。珍しいな、と思うと同時にぞっとする。
「お、井上やっと写った〜。決勝行くってのに小さいな〜」
伊沢さんはお菓子片手にテレビの1番前を陣取っている。
「げんげんさん写しすぎですよね。優勝するって言っても露骨」
今日のメンバーの中では、ナゾトレでテレビ出てる松丸さんとげんげんさんがイケメンというのもあって、その2人がよく映る。
2人ともクイズ畑ではないのに、ここまで活躍されると素直に悔しい。
「げんげんが強いのは本当だけどね…、過去問そのまんますぎる。ネタ切れじゃん」
それはその通りだった。ベタな問題が使い回されるのはいい。それを対策するのがクイ研だ。
ただ、『騙し』とでもいうような、視聴者に解き方を悟らせないための方法が、去年と一緒なのは見ていて痛々しかった。
立方体の体積に見せかけた等差数列の問題も、資料の右下の説明から解かせる問題も。別に種明かしをしたところで、解いた人間の知識量も計算スピードも否定されるわけではないのに。
「マジメに解こうとしてる視聴者がいないと思ってるんじゃないすか」
……それは時々、自分たちの動画の視聴者にも思う感想だけれど。
「かもね。実名垢で呟いちゃおうかなあ」
水上さんは、いつもどおりのはにかみを見せると、スマホのホームボタンに親指を合わせたのだった。
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作成日時：2018年3月10日 3時
