悪夢の妖精IV (ページ30)

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可愛いあの娘の元へ＊Trick2＊ページ30

天気が悪い。

意味、やる気が出ない、不調。

大して客のいない酒場のカウンター席でコインを操ろうものならコインは落ちて転がって。

いつの間にやら端に座っていたヴェールで顔が見えない女の足元に止まった。

？「ねぇ、ちょっと遊ばない？」

コインを俺に返しながら、女はそう言った。

グラスを3つ用意し、1つに4つ折りの紙を入れる。

それらを伏せてクルクルと回され、もともと当てる気もなかった俺にはどこに紙が入っているのかなど分からなくなった。

自慢の嗅覚など、もうない。

チップ「なんで前みたいに当てられないんだよ！」

ガキンチョに何故か罵られ、

ゴールド「…病気か？」

ゴールドには心配され、

ロレッタ「あんたどうしたの？恋でもした？」

…ロレッタには当てられた。

ロレッタ「嘘!?答えないってことはそういうこと!?」

…あいつは"そういう話"は大好きだ。五月蝿くなる。

…誰も覚えていなかった。

トリック「記憶喪失って、伝染るものなのか？」

？「…急になによ。早く当てて頂戴。」

何も考えず選んだグラスには空気が入っていた。

？「残念ね。」

トリック「…ああ、残念だ。」

去り際に女はこう言った。

「まだラフレシアの匂いでも残ってるのかしら？」

ガキンチョとゴールドと俺で迷った。

俺はラフレシアの匂いで死にそうだった。

…実は、それでも、

ファータのあの妖しくも美しい香りは覚えていた。

それは今でも変わらない。

だから分かった。

あの女は、ただの人間じゃない。

一応、あの4つ折りの紙を開いてみる。

左によったファータの写真。

隣にいるはずの誰かは写真から消えている。

…今日は天気がいいかもしれない。