【進撃】二度目があるなら【リヴァイ】 (ページ20)

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20話香りページ20

リヴァイＳＩＤＥ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

木曜日、

週末まで、とは思うものの
彼女に出逢ってから頭がいっぱいだ

記憶がなくても、AはA

この世界でおんなじ空気を吸って
生きているんだと知っていることがただ嬉しかった

俺は急いで仕事にキリをつけて、
残業ゾンビの彼らを残して帰る

『終わらなきゃ俺のデスクに置いとけ、
明日やってやる』

「そんな押し付けられないよ」

『その割には恨めしい顔だが』

「まぁ明日の朝楽しみにしててよ」

『何にも置いてないことをな』

ハンジが何か悟ったように微笑んだのが
気に食わなかった
俺は単純な生き物らしい

もう既に足はそこに向かいながら
携帯を手にメッセージを送った

〈今日いるか？〉

絵文字もなんにもない不愛想なメッセージ
返事はすぐだった

〈はいいます！来てくれるんですか？〉

〈少し邪魔する〉

〈まってます！〉

俺は会社から最短で店に向かった
足取りも終業後にしては軽すぎた
店の扉を開けると耳に慣れ始めたドアベルが鳴る

「あっリヴァイさん！いらっしゃいませ」

迷いなく彼女の立つカウンターの前に座った
店には他の客は少なく、雰囲気は落ち着いていた

『急に悪いな』

「嬉しいです、今日はお二人は？」

『残業だ、今は忙しい時期でな』

「リヴァイさんも忙しかったんじゃ？」

『すこしくらいは平気だ、息が詰まっちまう』

「息抜きは大事です、ゆっくりしていってください」

ジャケットを預けて椅子に座りなおす
つい癖ですっとメニューに手を伸ばすと
彼女がぱっと取り上げる

「あっ今日はアルコールはダメです
休肝日つくらないと
こっちのカフェメニューをどうぞ」

『あぁそういやそうだったな』

もともと酒を多く飲む方じゃあなかったんだが
Aのことを思い出す度
その感情をぶつける場所がそれしかなかった
会いたい、会えない、どうにもならない
人生がその堂々巡りだった

一瞬でも彼女を忘れられていたら
どんなに楽だっただろうか

ただ生憎、浴びるほどの酒をもってしても
酔えるほどやわな身体じゃなかった
酒がとびきり美味しかった記憶は今までになかった

それより、ずっと昔に
Aと二人で執務室で飲んだ紅茶が美味かった

あぁたしかあの時飲んだのは

ホワイトティー

目の前にその芳しい香りが広がった