検索窓
今日:11 hit、昨日:11 hit、合計:15,623 hit

知らない彼女-9 ページ41

「けどさ…Aちゃんと仲良くなって後悔もしてるんだ。だって…Aちゃんがどれだけ沖田のこと大好きかが目に見えて分かるようになっちゃったから」

「辛いのか…」

「うん」

「そうか」


俺は、相変わらず下手な相槌しか打てないでいた。

意外にも案外素直に"辛い"と俺に打ち明けてくれた千石に、気の利いた言葉の一つさえも掛けてやることができない。



「今日はAちゃんの護衛のつもりで来たくせに、さっきのナンパもろくにAちゃんのこと守ってあげられなくてさ。女の私じゃAちゃんのこと守れないんだって痛感した。そのくせ、やっぱり沖田にAちゃん独り占めされると悔しくて。汚いよね…」

「そんなことはない。あんたの啖呵は迫力があった。Aも千石もどう転んでも性別は女だ。力の面でもできないことがあるのは当たり前だ」

「…うん」

「無理をするな。俺はさっきあんたにそう言ったはずだが」

「…うん」


俺のその言葉で、千石の声が少し上擦った気がした。

そんな千石を見ていると、どうしてだか放っておけないと思った。

慰めの言葉など言えない、そう思っていたはずなのに、俺の口からはそれに近いような言葉が勝手に出て来てしまう。


「千石は汚くなどない。あんたもさっき言っていたように、Aは誰にも気が付かれないところで努力しているようなやつだ。あんたは、その誰にも気付かれないようなAの努力に気が付くことができたうちの一人だろう。綺麗な心を持っている証だと俺は思う」

「あ、りが…と」


三人が戻って来るまでの間だ。

それまでは、あんたの顔を見ないでおく。

気が付かないふりをしておく。


だから、三人が戻って来るそのときまでに、どうかいつもの明るいあんたに戻っていて欲しい。



俺はいつかと同じように、綺麗な心を持った者の涙に心が掻き乱されそうになっていた。



to be continued.

無邪気な彼女-1→←知らない彼女-8



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.3/10 (4 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
16人がお気に入り
設定タグ:薄桜鬼 , 夢小説 , 沖田総司   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

斎藤ようこちゃん(プロフ) - 応援してます (2020年12月26日 20時) (レス) id: e53507092f (このIDを非表示/違反報告)
水城(プロフ) - 斎藤ようこちゃんさん» こちらにもコメントくださりありがとうございます。励みになります。 (2020年12月26日 20時) (レス) id: 61fd283962 (このIDを非表示/違反報告)
斎藤ようこちゃん(プロフ) - 素敵です。 (2020年12月26日 13時) (レス) id: e53507092f (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:水城 | 作成日時:2020年12月20日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。