知らない彼女-4 ページ36
「ちょっとおじさん達。その二人、僕らの連れだから」
「ナンパなら他をあたってくれ」
僕と一君は急いで二人に駆け寄って、ナンパするために男二人でプールに来ていた可哀そうなおじさん達をギロリと睨む。
明らかに僕たちより年上だったから、"なんだこの餓鬼"みたく喰いかかって来られるかと思っていたけど…
「チッ…男連れかよ」
「次行こうぜ、次」
とまぁ、なんともあっさり引き下がられてしまった。
本当にナンパのために来てるんだな、あのおじさん達。
「総司…、よかった…来てくれて」
「ごめんね、A。怖い思いさせちゃった」
「ううん、私たちも更衣室の前でおとなしくしてなかったから…」
怖かったんだなってことがAの体の震えでよく分かって、僕はなんだかすごく申し訳ない気持ちになってしまった。
もう、平助が喉渇いたなんて言いださなきゃこんなことにならなかったのに。
まぁ、賛成した僕も同罪ではあるけどさ。
Aのことを落ち着かせながら、僕は一君と千石凛の会話をちらりと聞いてみる。
「千石、大丈夫だったか」
「うん、大丈夫だよ。こういうの慣れてるんだ」
「無理をするな。震えている」
「もう、大丈夫だって言ってるでしょ!」
慣れているとか言いながら震えてるあたり、この子にも女の子らしい一面があるんだななんて思ったりしたけど。
うん、一君がせっかく心配してくれてるのに可愛くないよね。
怖かったんなら、Aみたいに可愛く甘えればいいのに。
「あ、そういえば藤堂君は?」
「あ、忘れてた。売店のとこで待たせてるんだった」
「売店?売店にいたの?」
「うん。平助が喉渇いたって言うからさ」
とりあえず、僕たちは平助を待たせている売店へ戻る。
「いいなー!私も少し喉渇いちゃったよ」
「大丈夫。Aと"凛ちゃん"の分もちゃんと買っておいたから」
「「"凛ちゃん"?!」」
売店の方へ戻る道すがら、僕が千石凛のことを"凛ちゃん"呼びに改めたら、Aと千石凛は声を揃えて驚いていた。
どうして僕が、"千石凛"改め"凛ちゃん"をそう呼ぼうと思ったかっていうと、なんというか…一君に心配してもらったときに一瞬見せた安堵の表情がまぎれもなく"女の子"だったからかな。
今まで必要以上にAにベタベタしてた凛ちゃんは、どこからどう見ても僕みたいな"男"がもう一人いるようにしか見えなかったんだよね。
16人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
斎藤ようこちゃん(プロフ) - 応援してます (2020年12月26日 20時) (レス) id: e53507092f (このIDを非表示/違反報告)
水城(プロフ) - 斎藤ようこちゃんさん» こちらにもコメントくださりありがとうございます。励みになります。 (2020年12月26日 20時) (レス) id: 61fd283962 (このIDを非表示/違反報告)
斎藤ようこちゃん(プロフ) - 素敵です。 (2020年12月26日 13時) (レス) id: e53507092f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:水城 | 作成日時:2020年12月20日 0時