婚約者VS父親 ｜【赤・黄】

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ここは普通にしろ、A。

いつも会社でやっているように、普通で。






『はい。初めまして、中間です。』





「重岡です。」





『あの、つまらないものだと思いますが、よかったらこれ、どうぞ。』





「え？なんやろ、中身見てもええですか？」





『はい、どうぞ。』






重岡さんは左足で開けていたドアを固定しながら、

器用に鍵を持ったまま右手で箱を開けた。




最初はそんなことしたら絶対落ちる、４０００円のプリンが！

って思ったけど、重岡さんは運動神経がいいのか、

箱のバランスを崩さないままプリンのカップをひとつ取り出した。




まじまじとそのプリンをガン見し、何も言わない。






大丈夫かな？

もしかしてプリン好きじゃないとか？

いや、そもそもこの世界でプリンが好きじゃない人は存在するのか？





「こ、これ…」



『え？』



「これ、駅前にある高級スイーツ店のもんですよね？」



『あ、はい。そうですよ。』



「マジっすか？こんなんもらえませんって！これひとつ２０００円ですよ？！」





うん、それはちゃんと知ってる。




でもこれからも一応お隣でお住まいになるんだし、

安物や手ぶらで挨拶に行くわけにもいかない。





お父さんがいつも言ってた。


初めて人と挨拶する時には、自分のようによくしたれ。

付き合いがいのある人は、それと同じぐらい自分に返してくれる。






さぁ、重岡さん。


あなたは果たして付き合いがいのある人なのか？

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