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とりあえず母の事は一旦父に任せ、私は隣で呑気にお茶に手を伸ばす世一さんを無理やり廊下に引っ張り出す。
「お付き合いしてるってどういう事ですか…!」
「……他に誤魔化し方思いつかなくて」
「だからって"まだ"はおかしいです!」
2人に聞こえないように小さな声で詰めよれば世一さんは眉を下げて「ごめん、」と困ったふうに呟いた。が、その口端は分かりやすく上がっているのでちっとも悪いなんて思ってないだろう。
「……玄関で手を繋いできたのもそうだし、もしかしてわざとやってます?」
「………正直、あわよくばとは考えてました」
信じられない。
気づけなかった私も私だがまさかそれを逆手に取るとは本当に油断も隙もない人だ。
あからさまに目を合わせようとしない彼をじっと睨むが、実際のところ恋人という関係が1番納得のいく誤魔化し方であるのも事実なわけであまり強くも言えない。悩んだ末に結局ため息をつく他なかった。
「…とりあえず2人の前でだけは恋人って事にしておきます」
「……!」
「でも結婚とかの話はなしです。変に期待させたら後で余計に悲しませちゃうので」
「………分かった」
どこか含みのある返事に多少の違和感はあったが、部屋から聞こえてきた名前を呼ぶ声に慌てて2人の方へ戻る。「実家に来てまで2人きりになるなんて〜」という母のからかいに赤くなってあわあわする世一さんは至っていつも通りなので、さっきのは勘違いだったのだろうか。
相変わらず騒がしい母に呆れていれば、ふと後ろの方で小さく手招きする父と目が合った。どうやら私を呼んでいるらしい様子に首を傾げながらも近づくと控えめに声をかけられる。
「潔さんとはいつからお付き合いしてるんだ?」
「え。えっと……1、2ヶ月くらい前かな?」
「……そうか。いや、何でもない」
「?……うん」
難しい顔をして何か考え込む様子の父に「どうかした?」と聞いてみるが曖昧に笑って返されるだけで尚更首を傾げる。慎重な人なので別に珍しいことでもないけど。
何となく隣でその顔を眺めていると、ふとこちらを見やった父に優しく微笑まれた。
「潔さん忙しい人だろ?遠距離になると大変だと思っただけだよ」
「………遠距離?」
「何にせよ、いい人がいて良かったな」
ぽんと頭に手を置いて席を立った父に会話は強制的に終わってしまう。聞きたいことはあったが珍しく嬉しそうに笑う父の顔を見てはそれ以上何も言えなかった。
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YUY - 久しぶりに見たけどやっぱめちゃすち……🫶 (12月10日 1時) (レス) @page43 id: 2b504e2cbc (このIDを非表示/違反報告)
放浪者の神の目になりたい(プロフ) - 潔くんの小説…!!ありがとうございます…応援してます…!! (9月29日 22時) (レス) id: 8d6a7142fc (このIDを非表示/違反報告)
アアアアア??! - 凄く好きです! (9月8日 21時) (レス) @page25 id: fbc26f140f (このIDを非表示/違反報告)
りす(プロフ) - うわぁ、すっごく好きです、。めっちゃ気持ち悪い顔しながら見てます。めっちゃ好きなんで頑張ってください! (8月22日 22時) (レス) @page42 id: 6cf6d64f42 (このIDを非表示/違反報告)
YUY - んんんん気になるなあああ続きがあああすごくいいところで切ってくださる…あいらーびゅー… (5月7日 22時) (レス) @page37 id: 2b504e2cbc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瀬川 | 作成日時:2023年2月5日 11時