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午前1時。
世一さんはまだ帰ってこない。
いつもならこのままベッドに入って先に眠っているのだが何故だか今日は寝付けなかった。
シンと静まり返った部屋はまるでこの世に私1人だけが取り残されたかのように錯覚させる。
誰かに会いたい。話したい。外に出たい。
自分からしないのと強制的にさせられないのとでは全然違う。前までなら1日くらい誰とも会わなくてもどうって事無かったし、外に出ない日だって何度もあった。でも今は違う。
もしかしたらもう2度と外には出られないかもしれない。このまま世一さんが帰ってこなかったら私はこの先一生孤独に過ごすしかない。
膨れ上がる不安はどんどん私を追い詰めて思考を鈍くさせていく。
ここまで不安定になるのは初めてだった。
世一さんが朝あんな事を言うから、今まで知らないフリをしてきた孤独に向き合ってしまったのかもしれない。ただ突然襲ってきたどうしようも無い程の恐怖に今日は耐えられそうもなく。何も考えられなくて、考えたくなくて、
気づいたら玄関のドアに手をかけていた。
手錠を付けられているわけでもドアに施錠があるわけでもない。握った手をゆっくりと下に押して引けば、それは簡単に開いた。
「………………」
久しぶりに吸った外の空気は冷たくて気持ちがいい。
裸足のままで家を出たために、ぺた。ぺた。と自身の足音が廊下に大きく響いた。そのまま流されるようにエレベーターに乗ってしまえば少し頭は冷静になってきて、…………ようやく世一さんのことが過ぎった。
「…………ちょっと歩くだけだし」
何も一生戻ってこない訳じゃない、ただ誰でもいいから人に会いたかったのだ。
『………………いくなよ、』
「…………」
ふと、いつしかの夜に彼が言った言葉を思い出して足がすくむ。あの時の寂しそうな顔は今の私と同じだったのだろうか。私はどこにも行かない、なんて言っておいてとんだ嘘つきもいいところだな。
「……………かえろ、」
もう十分に気は紛れたし、このまま下の階まで降りたらまた上まで戻ろう。幸いにも途中で乗ってくる人は1人もおらずエレベーターはスムーズに1階まで降りていった。こんな格好で誰かと鉢合わせるのも気まずいし、内心ほっとしながらアナウンスと共にドアが開いた時
「……………は?」
「……………ぁ」
何とも最悪なタイミングでドアの前に立っていた今朝ぶりの世一さんと、ばっちり目が合った。
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YUY - 久しぶりに見たけどやっぱめちゃすち……🫶 (12月10日 1時) (レス) @page43 id: 2b504e2cbc (このIDを非表示/違反報告)
放浪者の神の目になりたい(プロフ) - 潔くんの小説…!!ありがとうございます…応援してます…!! (9月29日 22時) (レス) id: 8d6a7142fc (このIDを非表示/違反報告)
アアアアア??! - 凄く好きです! (9月8日 21時) (レス) @page25 id: fbc26f140f (このIDを非表示/違反報告)
りす(プロフ) - うわぁ、すっごく好きです、。めっちゃ気持ち悪い顔しながら見てます。めっちゃ好きなんで頑張ってください! (8月22日 22時) (レス) @page42 id: 6cf6d64f42 (このIDを非表示/違反報告)
YUY - んんんん気になるなあああ続きがあああすごくいいところで切ってくださる…あいらーびゅー… (5月7日 22時) (レス) @page37 id: 2b504e2cbc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瀬川 | 作成日時:2023年2月5日 11時