23 ページ23
「………世一さん、」
「……………ん」
「世一さん！」
「っ………ちゃんと、起きてたから」
「いや寝てましたから。
眠いなら無理して起きてることないですよ」
んーと言ってなかなか話を聞かない彼の手を無理やり引っ張るがビクともしない。
お風呂を上がった時から既にうとうとしていた彼だったが、寝ることを勧めても何故か誤魔化して起きようとする。私はともかく、世一さんは明日も早いんだからさっさと寝ればいいのに。
「世一さーん、ベッドで寝ないと風邪引きますから」
「ん〜…………じゃあAさんも一緒にねよ、」
「……はぁ?」
「家はベッド1つしかないから、寝るなら一緒にだけど」
「なっ、いや私は床でもいいですし！」
「それはダメ。だったら俺今日は寝ない。」
「っ〜!!」
ようやく話を聞いたかと思えば急にわがままを言い出した彼に頭を抱える。
サッカー選手だよね？睡眠とか特に大事しないといけない人だよね？？
しかもこの人、私が断れないことを分かって言っているからタチが悪い。確信犯だ。
「な、一緒にベッド行こ？」
「っだから行かな……え、ちょっと、」
突然立ち上がってぐいっと腕を引っ張った彼に転びそうになるのを何とか耐える。
寝ぼけているらしい彼は反対の手で目を擦りながら寝室に向かってのそのそと歩きだした。
「ちょっ、世一さん!いい加減にっ、わ！」
「……ん、おやすみAさん」
必死の抵抗もむなしくベッドに引きずり込まれ、あろう事かそのまま正面から抱きしめられてしまう。
「？？？」
すでに規則正しい寝息を立てる彼に開いた口が塞がらない。私を人形か何かだと思ってる？？
正直お昼にたくさん寝てしまったからまだ全然眠くないし、何より彼の寝息が耳ににかかる程近いのに眠れるわけがない。
無理やりにでも起こそうかと思ったが、ふと見えた目元のクマにそれもはばかられる。
………やっぱり仕事忙しいのかな。
起こすのは諦め、せめて反対側を向いて寝ようとゆっくり身をよじった時、突然世一さんの抱きしめる手に力が入った。
「………………いくなよ、」
必死に袖を掴んで私を引き止める彼の顔は、どこか寂しそうにも見えて。
「……A、さん」
「…………大丈夫。どこにも行きませんから、
おやすみなさい。世一さん」
どうにか安心させたくて、私もその背中を強く抱きしめ返してしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1268人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
YUY - 久しぶりに見たけどやっぱめちゃすち……🫶 (12月10日 1時) (
レス) @page43 id: 2b504e2cbc (このIDを非表示/違反報告)
放浪者の神の目になりたい(プロフ) - 潔くんの小説…！！ありがとうございます…応援してます…！！ (9月29日 22時) (レス) id: 8d6a7142fc (このIDを非表示/違反報告)
アアアアア？？！ - 凄く好きです! (9月8日 21時) (レス) @page25 id: fbc26f140f (このIDを非表示/違反報告)
りす(プロフ) - うわぁ、すっごく好きです、。めっちゃ気持ち悪い顔しながら見てます。めっちゃ好きなんで頑張ってください！ (8月22日 22時) (レス) @page42 id: 6cf6d64f42 (このIDを非表示/違反報告)
ＹＵＹ - んんんん気になるなあああ続きがあああすごくいいところで切ってくださる…あいらーびゅー… (5月7日 22時) (レス) @page37 id: 2b504e2cbc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：瀬川 | 作成日時：2023年2月5日 11時
