１２：私だって、覚えてる ページ18
｢A｣
そう彼女を呼ぶ、優しいお母さんの声。
｢A｣
そう彼女を呼ぶ、頼れるお父さんの声。
どちらもAの誇りで、宝物だ。例え本当の家族ではなくても。
子供が出来ぬ夫婦で、可愛い子を引き取りたがっていたらしい。そして身寄りのないAは彼女たちの子供になった。
でも、何か足りない気がした。
ずうっと、そんなもやもやが胸の中にうずいている。
優しくて頼れる人が、他にいた気がした。
何か絶対に忘れてはいけない人がいた気がした。
何も無かった自分に、全てを与えてくれた人が───確かにいた気がした。
名前を。
住むところを。
優しさを。前に進む力を。
──そして、Aの大好きな青空を。
｢(思い出せないってことは、まあ……その程度だったのかな？)｣
そう言い聞かせても、どうもしっくり来ないまま。
どんぐりを拾い集めながら、歌を歌う。何か足りない気がした。
低い声がない気がした。
｢どーんぐりころころ、どーんぐりこ｣
何か歌詞が違う気がした。
何だか、手が寂しい気がした。
冷たくて大きな手が、今は何だか欲しい気がした。
｢(寂しいんだ。今日はもう、お家に帰ろう)｣
帰れば暖かい家族が待っている。
最初の、本当の家族はAに冷たかったが──今の家族は本当に暖かい。Aはお父さんとお母さんが大好きだ。
｢……｣
どんぐりを全部、足元にちらばせて──Aは長い道を真っ直ぐに走った。
家を目指して、真っ直ぐに走る。
帰ったらお父さんとおままごとをしようと決めた。
とにかくくたくたになるまで、お父さんを引っ張り回すのだ。
｢──あ！｣
土手の下。普段は誰もいないのだが、今日は子供が三人いた。
二人は一人を叩いたり殴ったりしていた。
叩いた後に、笑っている。
｢なんでそんなことも出来ないんだよ｣と罵っている。
Aは足を止めた。
何だか、それが無性に勘に触ったからだ。
出来なくて何が悪い。出来るまでやればいい。
そのために。
｢──そのために｣
何かが喉元にまで出掛かった。とても大事なこと。
……だがそれを完全に思い出すよりも先に、Aは土手の下に滑り込んでいた。
勝てないケンカはしたくない。
だけど、行かなければいけない気がした。
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:襟乃空ちゃん: - ほのぼのだなぁ(*^-^*)とか思ってたらすっごく感動しました！リアルで泣きました (11月14日 1時) (
レス) @page20 id: b670a6340b (このIDを非表示/違反報告)
かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - オルバさん» コメントありがとうございます！そう言っていただけて大変光栄です！！＼(^o^)／私も彼らのようなほのぼのしたお話は好きなので、いずれは違う形で続編が書けたらいいなあと考えています！＼(^o^)／ (2017年12月25日 11時) (携帯から) (レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
オルバ - すごく良かったです！確かにAOFの小説はないので、こういうのもいいなと思いました！ぜひ、この続きの作品も書いてほしいです！お願いします！！ (2017年12月25日 11時) (レス) id: 87aa7ed573 (このIDを非表示/違反報告)
かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - 令さん» 最後までお付き合い頂き、ありがとうございました！！その後のことを考えてにやにやしてもらえるとは、執筆冥利に尽きます！！パパになるってきっと難しいですよね。そんな葛藤ものをこれからも作品にできたらなあと考えてます！ありがとうございました！！ (2017年10月29日 17時) (携帯から) (レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - 詩乃さん» 最後までお付き合い頂き、本当にありがとうございます！他の作品でも暖かなコメントをしていただき、本当に支えられました！少しでも誰かの心に残るような作品作りをこれからも目指して、頑張ります！！ (2017年10月29日 17時) (携帯から) (レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かぁびぃ(駄作者) | 作成日時：2017年10月22日 8時
