１０：クソガキは言いました。『成りたい自分って、なんなんですか？』 ページ10
その日、黒霧はわざわざ暗くした部屋の中で──ひとり考えていた。
これからのことを、だ。
先生は、意思もなくでも地面へばり付くようにして生きてきた自分に声を掛けてくれた。
理由の８割が自らの個性のお陰だと解っていたが、それでも最初のころ考えていた『利用したら切り捨てる』と言う気持ちは無くなっていた。
『大丈夫、僕がいる』
あの時差し出された手を、忘れることはないだろう。
例えば、見付けてくれた理由が『期限付きのお目付け役』を押し付けるためだったとしても。
捨てるのも、捨てられるのも慣れていると。自分でそう思っていたからだろうか。
──だが、捨てれないものが出来てしまった。
抱いてはいけない気持ちを自覚してしまって、そのたびそんな自分に苛々した。
｢なに部屋真っ暗にしてるの？ウケる｣
突然点けられた電気。そこには、眠そうな顔で立っているAがいた。
ドアに片手を掛けて、分かりやすく欠伸までしている。
｢……考え事です。人の部屋に断りも無く入ってくるとは、ずいぶん不躾な方だ｣
｢言うわね。よく見なさい。まだドアを開けただけで入ってないわよ｣──そう言いながら、彼女は足をヒラヒラ動かす。
｢ふざけるな｣
｢あんたがふざけんな｣
敬語が無くなった黒霧に、Aは低い声で言い返した。
なぜAにだけ、最近こうも突っ掛かってくるのか。確かめるなら今しかないと思い至る。
｢自分の立場、ちゃんと理解してる？ここは裏社会よ。あんただって、今まで上手いことやって来たんでしょうが。
大人げないと思わない？｣
Aはそこまで言って、思わず顔を苦くする。
『大人げない』だなんて、まるで黒霧を大人として見ていると認めたようなものだ。
子供扱いする気もないが、これは失言だったかもしれないと杞憂する。
──だが、黒霧はただ下を向いていた。
｢……最近も、坊やと呼ばれましたね｣
｢そうね。いい加減私に謝りなさいクソガキ｣
思い上がるなら、重しを乗せる。
いくら可愛い教え子でもそこは譲れなかった。
｢無くしたくないものは、ありますか｣
｢……は？｣
｢自分がいったい誰なのか、考えたことがありますか。
なんで生まれたんだろうって、悩んだことはありますか。
見繕って、周りの雰囲気に染められて変わっていく……そんな自分に不安を覚えたことはありますか｣
珍しく饒舌に喋る彼に、Aは黙って話を聞いていた。
解らなかった。黒霧がいったい何が言いたいのか。
彼は賢いから、なにかを遠回しに伝えたいのだと勝手に考えた。
｢成りたい自分って、なんなんですか？｣
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かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - 詩乃さん» ありがとうございます！！本当に『黒霧さんがお相手の作品無いなあ』と思い執筆に至りました！そう言って頂けて本当に嬉しいです！！ギャグばかり執筆していたので、シリアスに出来ているか不安ですが、これからも期待に応えれますよう頑張ります！＼(^o^)／ (2017年10月20日 17時) (携帯から) (
レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
詩乃(プロフ) - 初コメ失礼いたします^ ^黒霧さんの小説珍しいな、と思って読んでみましたらクリーンヒットで毎日楽しく読ませていただいております！！応援しています！！これからも更新頑張ってください！！ (2017年10月20日 17時) (レス) id: 090e21dff8 (このIDを非表示/違反報告)
かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - とてもおいしいたまごさん» コメントありがとうございます！夜分にレス、失礼します！▼黒霧さん大好きなんですが全然作品が見当たらず『だったら作ろう！』と思い立って作成しました＼(^o^)／ですのでそう言ってもらえて、とても励みになりました！更新頑張ります！ (2017年10月16日 0時) (携帯から) (レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
とてもおいしいたまご(プロフ) - やっと見つけた黒霧さんの作品…!黒霧さん少ないので嬉しいです。更新頑張って下さい。 (2017年10月16日 0時) (レス) id: 57dca4d24b (このIDを非表示/違反報告)
かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - 部久さん» コメントありがとうございます！！黒霧さんが自身が結構マイナーなので、好きと言ってもらえて光栄です！別作でギャグを書いていますので、ちゃんとシリアスに出来ているか不安でしたが、安心しました！ (2017年10月15日 8時) (携帯から) (レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かぁびぃ(駄作者) | 作成日時：2017年10月14日 2時
