０４：彼とヴァイオリン ページ4
想像以上に、黒霧はずっと有能だった。
世の中、天才と称される存在は確かにいるらしい。Aの目の前にいる黒い彼がまさしくそれに当たるのだから。
──恐ろしいまでの鬼才の持ち主。
教えたことは、基本的すぐに理解する。1を言えば、10は解ると言わんばかりに。
確かに｢ああ。これは苦手なんだな｣と思われる分野は彼にも存在した。
特に裏社会にいたせいか、たまに行動や言動が大雑把で乱暴になるときがあるが、それを差し引いても彼は天才だとAは確信している。
｢いるものね。天才って｣
｢持ち上げすぎかと｣
黒霧はそう笑いながら、今まで担いでいた小柄なヴァイオリンをそっと壁に立て掛けた。
たしなむ程度に教えたピアノやヴァイオリンは、ものの２日で完璧に覚えられてしまった。音楽に対しては全くの無学だと踏んでいたのだが、そんな想像さえ超越している。
｢ただ、やっぱりまだまだ音が荒いな｣
｢……質問をしても？｣
｢ん？はいはい。どうぞ｣
黒霧は腕を組んだまま──上司の前で腕を組む辺り、礼儀がまだまだなってない証拠だが──Aを見やった。
｢楽器が弾けることで、どんな面に対してプラスになるんですか｣──まだまだ隠しきれない子供臭さが、語尾の吐き捨てる感に現れていて、Aはまた笑った。
｢黒霧を知りやすくなる｣
｢私を？｣
｢さっきも言ったけど、音がまだ荒い。
貴方自体が、ずさんでる証拠よ｣
｢……無茶苦茶だな｣と黒霧はAから目をそらしながら、ぼそっと小さく愚痴を溢した。
｢本当に、こんなところはクソガキって感じなのに｣とAは思う。
ただ、黒霧だってすでに理解はしていた。音が荒れてるのは、間違いなく自分の中の何かが原因だろう。
楽器を使って音を奏でているのは、誰でもなく──自分なのだから。
｢それに、何に対しても『できない』より『できた』方が良い。
相手に近付きやすく、かつ警戒を解きやすい術として──楽器はなかなか悪くないわ｣
｢そうでしたか。失礼しました｣
頭を軽く下げた彼。本当に反省したかは眉唾物だが、賢い彼だ。理解はしたことだろう。
｢それにさ、楽しいでしょ？｣
｢たのしい？｣
｢出来なかった事が出来たら｣
裏の社会じゃ身に付きにくい技術を、Aがこれから補っていかせる訳だが──話を聞く限り、黒霧は楽器なんて今まで触ったことさえ無いはずだ。
｢生きるために必要な技術だから、覚えたまで。……今までと同じですよ。
楽しいかとか、関係ありませんね｣
そう君は言う。
だが、彼は再び楽器に手を伸ばすと……それを迷い無く構えてみせた。
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かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - 詩乃さん» ありがとうございます！！本当に『黒霧さんがお相手の作品無いなあ』と思い執筆に至りました！そう言って頂けて本当に嬉しいです！！ギャグばかり執筆していたので、シリアスに出来ているか不安ですが、これからも期待に応えれますよう頑張ります！＼(^o^)／ (2017年10月20日 17時) (携帯から) (
レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
詩乃(プロフ) - 初コメ失礼いたします^ ^黒霧さんの小説珍しいな、と思って読んでみましたらクリーンヒットで毎日楽しく読ませていただいております！！応援しています！！これからも更新頑張ってください！！ (2017年10月20日 17時) (レス) id: 090e21dff8 (このIDを非表示/違反報告)
かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - とてもおいしいたまごさん» コメントありがとうございます！夜分にレス、失礼します！▼黒霧さん大好きなんですが全然作品が見当たらず『だったら作ろう！』と思い立って作成しました＼(^o^)／ですのでそう言ってもらえて、とても励みになりました！更新頑張ります！ (2017年10月16日 0時) (携帯から) (レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
とてもおいしいたまご(プロフ) - やっと見つけた黒霧さんの作品…!黒霧さん少ないので嬉しいです。更新頑張って下さい。 (2017年10月16日 0時) (レス) id: 57dca4d24b (このIDを非表示/違反報告)
かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - 部久さん» コメントありがとうございます！！黒霧さんが自身が結構マイナーなので、好きと言ってもらえて光栄です！別作でギャグを書いていますので、ちゃんとシリアスに出来ているか不安でしたが、安心しました！ (2017年10月15日 8時) (携帯から) (レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かぁびぃ(駄作者) | 作成日時：2017年10月14日 2時
