カラスが七羽 ページ7
｢お前も苦しいのか｣
治崎はそう、少女に聞いた。意図的に『お前も』と聞く。
何故なら、治崎も苦しいからだ。
小さな胸にたくさんの苦い経験を溜め込んでいた。誰にも打ち明けられなかった毒が、今も胸の中で渦巻いていた。
助けてくれと伸ばした手が、如何に無意味か知っていた。それが堪らなく苦しいと思う。
───本当は、そんな心無い言葉が欲しいんじゃない。
『可愛くない』なんて言われたくないし『危ないやつ』も嫌だった。だがこの2つはきっと本当の事だからと、治崎は割り切る。
でも、堪らなく寒かった。汚いなんて言わないから、手を繋いで欲しかった。
『いらない』なんて言わないで。『出ていけ』も嫌なんだ。
───考えたら泣きそうになるから、いつも考えずに生きている。
そして、目の前の少女に可能性を見出だした。もしかするとこの少女は『自分と同じ境遇なのかもしれない』と。
｢くるしいよ。だってもうすぐしぬんだ｣
｢………え？｣
だが少女の回答は、さらに斜め上だった。
───もうすぐ死ぬ？まさか、こんな元気なのに？
何が死ぬのかと聞けば、｢わたし！｣と返事が返ってきた。
｢嘘だ｣
嘘だと思いたい。人はそう簡単に死ぬわけではないはずだ。
治崎は握られた自らの手を見ながら、そう思う。
｢ほんとうだよ｣
不思議な少女はそう笑う。こんなに不可解な存在なのに、どうしてだろう。
なぜ彼女の笑顔は、こんなに儚く美しいのか。
｢だからね、かいくんといっしょにいたい！ だってかいくんすきだから！！｣
｢……ふふ、ふふふ｣
思わず口から、情けないほど震えた笑い声が漏れる。笑わずにはいられなかった。
久方ぶりに治崎に人の温もりをくれた、訳の解らない謎の存在。
謎過ぎる存在だが、確かに治崎の手を握る存在で、話し掛けてくる存在で、笑顔を見せてくる存在だった。
だが、もうすぐ死ぬ？
大事な人ほど、なぜ離れていくのだろう。治崎はそう思った。
ああそうだ。自分はこの少女に特別な何かを向けていると治崎は考える。
久方ぶりの人の手は、何故かこんなに暖かくて。治崎は｢火傷するかも｣なんて笑った。
｢かいくんは、わたしとやさしくしてくれたね｣
｢馬鹿、会うの初めてだろ｣
そして治崎は少女の手を握り返し、彼女より先を歩き出した。
｢良いよ。……最後の瞬間まで、俺は君といてあげる｣
くすりと笑う。
──カラスの恩返しは、不器用で、そして命懸けなのだ。
その手を取ってくれた人のために、自らの命など省みず……盲目的な恩返しを開始する。
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かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - 森田菜々子さん» ありがとうございます！一重に皆様のお陰です！この結果に傲らず、頑張っていきたいと思います！！ (2017年11月27日 5時) (携帯から) (
レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
森田菜々子 - かぁびぃさん、ランキング最高４１位おめでとうございます。 (2017年11月26日 20時) (レス) id: 52dd8ac394 (このIDを非表示/違反報告)
かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - 唐揚げちゃんさん» ありがとうございます！！常に頭の中には妄想と想像でいっぱいなので嬉しいです(笑)これからの展開が楽しみと言ってもらえて、最高に励みになります！短いお話になると思いますが、ぜひ気ままにお楽しみください！ (2017年11月26日 18時) (携帯から) (レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
唐揚げちゃん - かぁびぃさんはどうしてこんなにすぐ面白い作品を作れるのか驚きです(゜д゜) これからの展開が楽しみです！頑張ってください！ (2017年11月26日 17時) (レス) id: a1d6c9a5fb (このIDを非表示/違反報告)
かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - クロスさん» ｢解せぬ｣──そんな治崎さんが目に浮かぶようです(笑) 音本さんの作品ではありがとうございました！！書きたい話がたくさんある駄作者さんです＼(^o^)／早くも新作に来てくれて本当に感謝です！！ (2017年11月26日 14時) (携帯から) (レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かぁびぃ(駄作者) | 作成日時：2017年11月26日 12時
