８月：チサキ カイ ページ8
戦いがあって、そして終わったとされる8月。
だがオーバーホールの戦いは未だに終わらないし、激しさも増すばかりだ。
仕事においても、人生においても──今においても！
｢ねえ、名前は？｣
｢しつこいなっ｣
オーバーホールに抱き着きながらAはそう言い続ける。
バランスを崩したオーバーホールは、そのままA宅のふかふかのソファーに倒れ込む。
あの短冊の件があって以来、Aはずっとこんな感じだった。
……オーバーホールが短冊に『彼女の願い事が叶いますように』なんて親切心で書いたせいもあるのだが。
｢名前は捨てた｣
｢……なんて言わずにっ｣
そうニコニコしながら聞いてくるAのおでこを、軽く指で弾いてやる。
｢うにゃっ｣と情けない声を出しながら、Aは後ろに引っくり返った。
それを見て、オーバーホールは｢はははっ｣と声を上げて笑う。
｢ちょっと、今の本当に痛い｣
｢痛くしたから、当然だ｣
そう言いながら、ころんっとソファーに転がってしまった彼に──Aはまた頬っぺたを膨らませた。
だが暫くしてからだろうか。……オーバーホールがまた寝返りをソファーの上で器用に打つ。長い足が、ソファーからはみ出しているが本人はお構い無しである。
｢名前、そんなに知りたいか｣
突然だった。
Aは少しぽかんとなったあと、首を縦に振る。
何でもかんでも随分といきなりだね。……なんてはにかみながら。
｢ほとんど誰にも教えてない。お前だから、良いかなって思った｣
｢特別って受け取ってもいい？｣
｢そっちの方が、らしいだろ｣
らしいって？──次は頭をこてんと横に倒したAに、オーバーホールは｢だから｣と続けた。
｢恋人っぽいな……ってことだ｣
そしたらAはいきなり赤面し、あわあわと口を動かしながらその場で丸くなった。
解っている。だが改めて｢恋人｣と言われると──どうも照れ臭かった。
それは彼もなのだろう。……少しだけ、顔が紅潮している。
マスクで隠れて、ほとんど解らないのだが。
｢……治崎だ｣
｢え｣
｢俺の名前。『
オーバーホールはそうAに名乗った。遠い昔に捨てたものだ。
Aは｢治崎、チサキ｣と繰り返す。何回もその単語を口の中で転がした。
｢……廻くん！｣
｢なんか新鮮すぎて、誰だって感じだ。
たぶんそれで呼んでも俺は反応しないだろうな｣
なんて、くすくす笑った。
Aも｢願い事叶っちゃったあ｣と言いながらころんと寝そべる。
｢なあ、俺はちゃんとお前の記憶に残れてるか｣
その言葉だけが小さく一人遊びした。
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かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - はなめがねさん» ありがとうございます！！そして続編にて一話だけ更新し完結しました(笑)本当にありがとうございます！皆様のお陰です！！素敵だなんて本当に嬉しいです！！(>_<) (2017年11月2日 17時) (携帯から) (
レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
はなめがね(プロフ) - うわあああ……！！！思わず泣いてしまいました…！なんて素敵な事するんだかぁびぃさん私怒ってますよ（）更新頑張ってください、応援しています！ (2017年11月2日 16時) (レス) id: b5b2abb61e (このIDを非表示/違反報告)
かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - こずめさん» ありがとうございます！！私も『オーバーホールの作品少ないな』と思い執筆に至りました。あと個人的に彼が凄く好きで…！内容が好みだと言ってもらえて、凄く嬉しいです！彼らの一年間、宜しければ最後までお付き合い下さればと思います！ (2017年10月31日 2時) (携帯から) (レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
こずめ(プロフ) - オーバーホールの夢小説なかなか見 ないから…嬉しすぎて…しかも内容好み過ぎる…貴方が神か;;; (2017年10月31日 0時) (レス) id: 6ff71fb740 (このIDを非表示/違反報告)
かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - 華さん» はじめまして！拙作を閲覧してくださりありがとうございます！！少しでも皆様の心にささやきかけるものがあるのなら、本作を執筆していて良かったなと思えました！どんな結末になるのか、ぜひ彼らの一年を見届けてほしいなと思います！ (2017年10月29日 17時) (携帯から) (レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かぁびぃ(駄作者) | 作成日時：2017年10月24日 20時
