６月：誰よりも幸せにしてみせる ページ6
6月の花嫁。なんて素敵な言葉がある。
何故かは知らないが、この時期に結婚するカップルは幸せになれるのだとか。
やはり女性であるAは、そういうのに憧れるらしい。
その日やって来たオーバーホールにそんな話をずっと聞かせてくれた。
｢職場の人も今度結婚するんだって｣
｢何の仕事をしてると言ったか｣
｢ああ。公務員だよ｣
そんなやり取りをして、思わずオーバーホールは笑ってしまった。
とてもおかしい内容に聞こえたのだ。久々に声を出して、笑う。
それをAは不思議そうに見つめていた。数回瞬きをする。
｢フフ、おかしいな。公務員が俺と居るなんて、まるでギャグだ｣
そう皮肉って、またマスク越しにくすくす笑う。
政府の犬とでも言うべきこの個性社会の人間が、爪弾き者であるヤクザといるなんて、と。
｢な、なによ。捕まえて欲しいの？｣
｢なぜ捕まえないんだか｣
それは、と口ごもる彼女。
オーバーホールも、何と無く彼女の言いたいことを察した。
察して、何だか世話しなくなる。目線が泳ぐ。
"ある覚悟"を決めて、この日Aの家に来たはずだろ落ち着け。と自分に言い聞かせる。
｢ゴクドー者の人でも、職場結婚ってするの？｣
｢……まあ無くはないんじゃないか？｣
｢結婚したら、さ、左遷されたりする？｣
｢なんだその如何にも公務員って感じの質問は……｣
そう言いながら、また笑った。
彼女もつられて笑う。ああ。良い時間だなとオーバーホールは思った。
まだ続けばいいのに。ああ、あと半分か。───なんて考える。
｢6月の花嫁は幸せになるのだろう｣
｢雑誌と親の話によると！｣
｢……随分テキトーだな｣
と言いはしたものの、そんなAに惹かれたのは間違いなくオーバーホール自身だった。
自分といても迷惑なだけだと、理解していても離れられないほどにまで。
懐から、ここに来る前に買った花束を取り出した。懐に収まるくらいなので派手さは皆無だが──オーバーホールはこの簡単な花束を選んだ。
まるで、自分のようだと思ったから。
｢この先もずっと幸せに出来る保証は出来ない。
寂しい別れをさせるかもしれない。
……だが。今だけは、誰よりも幸せにして見せる｣
ヤクザらしかぬ台詞と、表情で───オーバーホールは少しだけ緊張したような声色で続けた。
｢俺と付き合ってください｣
花越しに見える彼の整った顔に、Aは呆然としながら──笑って応えた。
｢私も好きです。誰よりも幸せにしてください｣
受け取った花束と、意外と繊細な告白を胸に留める。
──12月まで、あと半分を切った。
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かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - はなめがねさん» ありがとうございます！！そして続編にて一話だけ更新し完結しました(笑)本当にありがとうございます！皆様のお陰です！！素敵だなんて本当に嬉しいです！！(>_<) (2017年11月2日 17時) (携帯から) (
レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
はなめがね(プロフ) - うわあああ……！！！思わず泣いてしまいました…！なんて素敵な事するんだかぁびぃさん私怒ってますよ（）更新頑張ってください、応援しています！ (2017年11月2日 16時) (レス) id: b5b2abb61e (このIDを非表示/違反報告)
かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - こずめさん» ありがとうございます！！私も『オーバーホールの作品少ないな』と思い執筆に至りました。あと個人的に彼が凄く好きで…！内容が好みだと言ってもらえて、凄く嬉しいです！彼らの一年間、宜しければ最後までお付き合い下さればと思います！ (2017年10月31日 2時) (携帯から) (レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
こずめ(プロフ) - オーバーホールの夢小説なかなか見 ないから…嬉しすぎて…しかも内容好み過ぎる…貴方が神か;;; (2017年10月31日 0時) (レス) id: 6ff71fb740 (このIDを非表示/違反報告)
かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - 華さん» はじめまして！拙作を閲覧してくださりありがとうございます！！少しでも皆様の心にささやきかけるものがあるのなら、本作を執筆していて良かったなと思えました！どんな結末になるのか、ぜひ彼らの一年を見届けてほしいなと思います！ (2017年10月29日 17時) (携帯から) (レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かぁびぃ(駄作者) | 作成日時：2017年10月24日 20時
