５月：鯉のぼりに素性を乗せて ページ5
Aと二人で、その日は町中をぶらぶらしていた。
至るところに鯉のぼりが浮かんでいる。今日は、そういう日らしい。
オーバーホールはAの女の子らしい買い物に付き合いながら、少しだけ先の未来について考えてみた。
まだ個性の解除方法が明確にならない。と言うことは、このまま時間が進めば──12月を越えた先に、自分はいないと。
死んだ後のことまでどうこう言う気は無いのだが、もし彼女に自分(オーバーホール)の事を聞いて｢ああ。いたいたそんな人｣では悲しすぎる。
なぜ悲しいと思うのか。
その理由を、もうオーバーホールは理解していた。
｢オーバーホール？｣
突然Aから話し掛けられ、オーバーホールは｢どうした？｣と目線を上げた。
｢大丈夫？｣
｢ああ｣
Aは｢そっかあ、よかった！｣と笑いながら、また買い物に精を出している。
彼女は相変わらず、普通にオーバーホールと付き合ってくれた。
───個性社会あるあるの、とても理不尽な余命宣告を告げた後からも。
記憶に残りたい。と思った。
本当に平凡な出会い方だったのに、こんなに入れ込むなんて逆に自分に驚くほど。
オーバーホールは買い物カゴを楽しそうに持ち上げるAに、｢なあ｣と短く声を掛けた。
辺りには、人がいない。タオル売り場とは存外マイナーな商品スペースなのかもしれない。
｢どうしたの？オーバーホール｣
何も知らない彼女が、オーバーホールの顔を覗き込む。
髪に手を掛ける仕草も、柔らかな笑い方も。全部不思議な暖かさがあった。
日陰者の彼には、ひたすら眩しくて。
｢俺は、ヤクザだ。……ヤクザの若頭｣
｢……えっと、ヤクザ？｣
何処かで言わなきゃ。
そう思ってはいたのに、我ながら訳の解らない場所でそれを告げたなと呆れ返る。
突然の発言に、余命宣告を告げた時みたいに───Aは固まっていた。当然だ。
｢そういう人種だ。怖いだろ｣
他人事見たいになるのは、それだけ彼女に離れてもらいたくないから……だろうか。
彼女は普通の人だ。オーバーホールなんかと一緒になんて、居ない方が良いに決まっている。
彼の欠片ほどの良心が、自分の素性を彼女に明かす勇気になった。
これで終われば、それに越したことはない。寂しいが落とし前は必要だ。
だが彼女は黙ってカゴをあさくりはじめる。
その中から小さな鯉のぼりを出すと──笑いながら彼に向けた。
｢……まいっちゃったな。今さらそんなこと言われても、君から離れられないもの｣
そして彼女は、オーバーホールから"離れない"ことを選んだ。
６月：誰よりも幸せにしてみせる→←４月：それも嘘なら、素敵だったのに
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かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - はなめがねさん» ありがとうございます！！そして続編にて一話だけ更新し完結しました(笑)本当にありがとうございます！皆様のお陰です！！素敵だなんて本当に嬉しいです！！(>_<) (2017年11月2日 17時) (携帯から) (
レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
はなめがね(プロフ) - うわあああ……！！！思わず泣いてしまいました…！なんて素敵な事するんだかぁびぃさん私怒ってますよ（）更新頑張ってください、応援しています！ (2017年11月2日 16時) (レス) id: b5b2abb61e (このIDを非表示/違反報告)
かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - こずめさん» ありがとうございます！！私も『オーバーホールの作品少ないな』と思い執筆に至りました。あと個人的に彼が凄く好きで…！内容が好みだと言ってもらえて、凄く嬉しいです！彼らの一年間、宜しければ最後までお付き合い下さればと思います！ (2017年10月31日 2時) (携帯から) (レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
こずめ(プロフ) - オーバーホールの夢小説なかなか見 ないから…嬉しすぎて…しかも内容好み過ぎる…貴方が神か;;; (2017年10月31日 0時) (レス) id: 6ff71fb740 (このIDを非表示/違反報告)
かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - 華さん» はじめまして！拙作を閲覧してくださりありがとうございます！！少しでも皆様の心にささやきかけるものがあるのなら、本作を執筆していて良かったなと思えました！どんな結末になるのか、ぜひ彼らの一年を見届けてほしいなと思います！ (2017年10月29日 17時) (携帯から) (レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かぁびぃ(駄作者) | 作成日時：2017年10月24日 20時
