１２月：聖夜のさよなら ページ12
｢クリスマスか、良いイベントだな｣
｢うん｣
｢プレゼントを持ったオジサンが来るなんて、昔の奴の感性は凄まじいものだ｣
｢そうだね｣
珍しく口良く喋る彼。普段はむしろAの方が話すのに───今日は真逆だった。
｢ケーキ、これで良かったか？お前の好きそうなのを選んでみた｣
｢……ありがとう｣
中くらいのホールケーキを袋から出して見せた彼に、Aは下をぐっと俯いたまま答えた。
｢……もうちょっと、笑えよ｣なんて、彼は困ったように笑う。
｢クリスマスなんだろ。お前、行事好きじゃないか｣
｢……無理して明るく振る舞わなくていいよ｣
｢なに？｣
突然彼女から出た言葉に、彼は耳を疑う。
確かに若干無理していたのはある。だが、それはAにクリスマスを楽しんで欲しいと言う気持ちがあってだ。
これが最後に、なるかもしれなかったからだ。
｢無理だって｣
下を向いたまま、Aは小さく小さく呟いた。
｢12月、もう終わるよ。あとどれだけ貴方といれるのかな｣
｢……｣
｢クリスマスを楽しみたいけど、笑おうとしたら泣いちゃいそうになるんだよね。
上手く言えないけど、その………｣
Aは下を向いたまま、ちょっとだけ鼻を啜る。
オーバーホールはただ、静かに聞いていた。
彼女は手を──彼に伸ばす。
そのまま彼の手を握る。
大きな手だ。でもとても綺麗な手で、Aは胸を締め付けられた気がした。
｢あと、何日いれるの？やっぱり死んじゃうなんて嘘なんだよね？
……なんてずっと考えてた｣
言えば言うほど苦しくなる。
オーバーホールはそう言われることをはじめから読めていたように、｢そうだな｣とAの頭を撫でた。
｢個性を解く方法も、まだ見付からない。残りの数日で見付けれる保証は……限り無く低いだろう｣
頭を撫で続ける、彼の掌。
よく見たら、もう手袋はしていなかった。
冬の寒さで冷やされた彼の手は、彼女の頭をやんわり冷ましていく。
｢お前の記憶に、俺は残れたか？｣
──Aは、ゆっくり顔を上げた。
泣きそうな顔を、ぐっと堪えて彼を見た。
彼は笑っていた。
優しげに下げられた眉、鋭い瞳にも暖かな光が差している。
｢残ったよ。───お陰でさ、君のいない未来なんて想像出来ないもの｣
一年。なんて短い月日なのだろう。
その中で恋人として過ごしたのは、さらに半分くらいだったか。
窓の外には、雪が積もっていた。
カラスの死体を、そっと隠しながら。
｢素敵な一年を、ありがとう。……廻君｣
最後の時まで、君と謳おう。
涙は、一年分の思い出の味がした。
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かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - はなめがねさん» ありがとうございます！！そして続編にて一話だけ更新し完結しました(笑)本当にありがとうございます！皆様のお陰です！！素敵だなんて本当に嬉しいです！！(>_<) (2017年11月2日 17時) (携帯から) (
レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
はなめがね(プロフ) - うわあああ……！！！思わず泣いてしまいました…！なんて素敵な事するんだかぁびぃさん私怒ってますよ（）更新頑張ってください、応援しています！ (2017年11月2日 16時) (レス) id: b5b2abb61e (このIDを非表示/違反報告)
かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - こずめさん» ありがとうございます！！私も『オーバーホールの作品少ないな』と思い執筆に至りました。あと個人的に彼が凄く好きで…！内容が好みだと言ってもらえて、凄く嬉しいです！彼らの一年間、宜しければ最後までお付き合い下さればと思います！ (2017年10月31日 2時) (携帯から) (レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
こずめ(プロフ) - オーバーホールの夢小説なかなか見 ないから…嬉しすぎて…しかも内容好み過ぎる…貴方が神か;;; (2017年10月31日 0時) (レス) id: 6ff71fb740 (このIDを非表示/違反報告)
かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - 華さん» はじめまして！拙作を閲覧してくださりありがとうございます！！少しでも皆様の心にささやきかけるものがあるのなら、本作を執筆していて良かったなと思えました！どんな結末になるのか、ぜひ彼らの一年を見届けてほしいなと思います！ (2017年10月29日 17時) (携帯から) (レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かぁびぃ(駄作者) | 作成日時：2017年10月24日 20時
