１月：余命宣告 ページ1
｢不思議な個性ですね。本当に掛けられた記憶は無いのですか｣
｢全くない｣
短く答えた俺に、目の前の個性を専門に見る裏世界の医者は｢成る程、御愁傷様｣と笑ってきた。
｢あと一年きっかりで、君は死にます｣───と。
【この一年を、謳え黒鳥】
まだまだ寒すぎる1月の空。風、そして空気。
オーバーホールは迷うこと無く、真っ直ぐと───ある場所に向かっていた。
アジトではない。連合でもない。普段の彼を知っている者でも、予想も出来ない特別な場所に。
人の行き交う通りを真っ直ぐ抜けて、狭い小道を歩いていけば───見えてくる小さな家。
手袋の着いた手で扉を叩く。二回叩けば、中から返事が返ってきた。｢はあい｣と。
｢……あ、オーバーホール！｣
｢ごきげんよう。A｣
出てきたのは、オーバーホールと変わらない年頃の女性だった。──彼は普段はしないような優しい顔で、彼女をAと呼んだ。
ひょんなことから出逢った仲なのだが、どこで人間関係が向上するかは解らないものらしい。
ひょんなことから出逢った2人は、またひょんなことで親友になっていた。
───だが彼女は、彼の素顔は何も知らない。
仲良くなれたのは何故か。それは彼女が本当にオーバーホールの好みに当てはまるから、というのが理由にある。
それだけじゃない。彼女の暖かな言葉や優しさが──何と無く、心地よく感じた。
本当は駄目だと解っていても、時間を見付けては会いに来ていた。2人はそういう"友達"なのだ。
｢オーバーホールが来てくれる時ってね。鳥が歌うのよ。
貴方は、やっぱり不思議な人ね｣
｢鳥……か。そいつはカラスかもしれないな｣
死骸を貪る、黒塗りの鳥。皮肉めいて彼はそう言った。
Aは｢違うわよ。もう｣と口を尖らせる。
｢それで、今日はどうしたの？
また『癒しがほしい』とか言うんじゃ無いでしょうね｣──そう可笑しそうに笑うAに、オーバーホールは眉をしかめた。
｢癒しは必要なんだ。俺の職場には、むさい男ばかりだからな｣
｢あらあら｣
｢……だが、今日は別件だ｣
なぜ真っ先に彼女の元に来たのか、オーバーホール自身にも解りかねた。
……ただ、そうしたいと自然に思ったのだ。
不思議な雰囲気の彼女に、知ってもらいたい自分のことを。
｢あと一年で、俺は死ぬらしい｣
表情もそのままに、固まる彼女。黙る彼。
知らない彼女。騙す彼。
彼女は生きて、彼は死ぬ。
無情に流れていくのは、有限の時。
──そして。
今、君に残す12の物語りが始まった。
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かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - はなめがねさん» ありがとうございます！！そして続編にて一話だけ更新し完結しました(笑)本当にありがとうございます！皆様のお陰です！！素敵だなんて本当に嬉しいです！！(>_<) (2017年11月2日 17時) (携帯から) (
レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
はなめがね(プロフ) - うわあああ……！！！思わず泣いてしまいました…！なんて素敵な事するんだかぁびぃさん私怒ってますよ（）更新頑張ってください、応援しています！ (2017年11月2日 16時) (レス) id: b5b2abb61e (このIDを非表示/違反報告)
かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - こずめさん» ありがとうございます！！私も『オーバーホールの作品少ないな』と思い執筆に至りました。あと個人的に彼が凄く好きで…！内容が好みだと言ってもらえて、凄く嬉しいです！彼らの一年間、宜しければ最後までお付き合い下さればと思います！ (2017年10月31日 2時) (携帯から) (レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
こずめ(プロフ) - オーバーホールの夢小説なかなか見 ないから…嬉しすぎて…しかも内容好み過ぎる…貴方が神か;;; (2017年10月31日 0時) (レス) id: 6ff71fb740 (このIDを非表示/違反報告)
かぁびぃ(駄作者)(プロフ) - 華さん» はじめまして！拙作を閲覧してくださりありがとうございます！！少しでも皆様の心にささやきかけるものがあるのなら、本作を執筆していて良かったなと思えました！どんな結末になるのか、ぜひ彼らの一年を見届けてほしいなと思います！ (2017年10月29日 17時) (携帯から) (レス) id: 87e86307e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かぁびぃ(駄作者) | 作成日時：2017年10月24日 20時
