【オリジナル】化け物騎士と、一晩物語り【夢小説】 (ページ4)

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【貴方が望むのならば】ページ4

｢これは戦争なんだ、黒い騎士｣

昔、私がよく言われた言葉です。
姫様がお産まれになる…100年くらい前の出来事ですね。

｢騎士様って、いったい何歳？｣

｢気になりますか？｣――私はそっと姫の口に、鉄の指を押し当てた。

｢秘密です｣

｢また秘密？騎士様は秘密ばかりね｣

姫様は少し不貞腐れたように頬を膨らませ、私から目をそらしました。
まるで反抗期の娘ですね。ふふ、流石に今のは不敬な考えでしたか。

｢続き｣――不貞腐れながら、私の話を聞きたがる。やはり貴方は愛らしいです。

私が騎士として活躍いたしましたのは、もっとも戦争が激しい時でした。
白旗も赤旗もあちらこちらに墓の代わりのように立っていました。

亡骸を掃除する班が間に合わず、国はいつも死の臭いがそっと漂っていて……何処か陰湿。そんな時代。

｢私は国のためなら、殺しをいとわぬ騎士でした｣

｢そんな風には見えないわ｣

｢そうですか？嬉しいです。ありがとうございます｣

しかし、代わりに国は何処か荒んでいた。先ほどの言葉を使うならばまさしく陰湿な国に。

骸を見るたび、我に返るのです。｢私は何をしているんだ｣と。

そしてそのたび、言われる決まり文句がありました。｢これは戦争なんだ｣と。

｢月日としては１００年経ちましたか。終わりませんね、争いは｣

｢終わるわ｣

私の少し後ろめたい言葉に、姫様は即答してくれました。
瞳は月の光をよく反射させていて、力がある。先ほどまで不貞腐れていた者とは思えぬ輝きさえ秘めていた。

――やはり貴方は。あの方の娘ですね。

｢私の代で、終わらせるわ。長い戦争を｣

だから、手伝ってくださる？

そう笑い、白い手を差し出してきた姫様の手を軽く握り――私は騎士として片膝を絨毯に付けた。

そして白い手の甲に、甲冑越しに口付けをする。

｢A姫。貴方の望みであられるのならば｣

私はいつでも貴方の味方なのです。
この、貴方の瞳のような月が輝く――夜の間は。