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【異常がただただ嬉しかった】 ページ3

最近、姫が住む国でも戦争の話が盛んに行われた。

時代にして、ちょうど中世くらいだろうか。
大きな国は小さな国に、武器と火を持って攻め込み――制圧し強くなる。

そんな時代に、姫も身体を震わせた。


「(昼間は、耐えなきゃ)」


いくら怖くても、一国の姫があからさまにしていれば、国民は不安になるだろう。
泣き付く勇気も、無かった。

母も父も仕事で忙しく、執事にも弱さは見せたくなくて――結局全部背負い込んで。


「(夜になれば、騎士様が来てくださるから)」


それまでは、ただ笑顔で耐えようと決めていた。

泣きたくなることも、たくさんある。
政治の話はまだ姫には難しいのに、大臣たちは当たり前のように話を振り、間違ったらすぐに怒るのだ。



「…本当疲れちゃう」

「お疲れさまです。姫」


そんな愚痴を騎士に聞いて貰う夜の時間が、本当に幸せだった。

包容力があって、頼れて、優しくて。
本当は人間じゃない。…なんて事は全然気にならないくらいに騎士に惹かれていたのだ。


「無理をしてはいけませんよ。姫様」

「うん。ありがとう…」

「心を殺してまで、自分を抑える必要は無いのですから」――そう騎士は笑った…ような気がした。


「心を殺すのは、死ぬよりも辛い。そんなものです」

「……難しいわ。どうすれば良いの?」

「簡単です。姫様自身の魂に、恥じない生き方をすれば良い」

「私の?」


姫は不思議そうな顔をして、自分の掌と胸元を交互に見ていた。
騎士は可笑しそうに笑うと、手を差し出す。


「いつでも自分が正しいと思えることを。

私は、そんな姫様の味方です」


いつでも頼ってください。騎士はそう言った。

姫が勢い良くベッドから騎士に向かって飛び掛かり、その首に抱き着いた。…反動で騎士の兜が部屋の隅にまで飛んでいってしまったが。
そして姫は「ありがとう」と騎士に笑い返した。


からっぽの騎士の体に、声はいつもより良く響く。

それさえ、人間たちと接するよりも――ずっと楽しく思えた。



姫はいつの間にか…異常な光景に慣れすぎていたらしい。

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猫夜桜((シラキ(プロフ) - 最高!!! (2018年8月26日 1時) (レス) id: 4588ab3ba5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かぁびぃ(駄作者) | 作成日時:2017年8月30日 3時

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